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中国・アジアウォッチ

中国経済、強まる減速懸念

――景況感が一段と悪化、預金準備率再下げも

湯浅 健司
  首席研究員兼中国研究室長

2021/09/01

 中国で経済の減速懸念が強まっている。今年上半期は順調に景気を回復させていたが、夏場の大雨や新型コロナウイルスの感染再拡大により工業生産などが変調をきたし始めた。けん引役である輸出にもブレーキがかかっており、海外の金融機関は相次ぎ2021年の実質成長率見通しを引き下げている。指導部は22年の共産党大会を控え、経済の腰折れによる社会の動揺を不安視する。社会不安を避けるため、9月以降、どのような景気対策に乗り出すか注目される。

【ポイント】

  1. 中国当局はこのほど、ネットメディアが経済情報を歪曲して意図的に悪い情報を流さないよう、取り締まりを強化することを決めた。経済の減速が誇張されて広がり、社会不安を招くのを恐れているためだ。
  2. 当局は経済の動向に神経質になっているが、足元の経済統計では彼らの神経を逆なでするように、好ましくない数字が並ぶ。8月のPMIは非製造業が7月より5.8ポイントも悪化した。新型コロナの再発が影響している。海外の金融機関は通年の成長率見通しを引き下げ始めた。
  3. 中国の指導部は来年の共産党大会を控え、経済の安定に力を尽くす構え。過度の経済減速を避けるため、今後、財政と金融政策を組み合わせた景気のテコ入れに乗り出すとみられる。

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