SPAC(特別買収目的会社)上場したスタートアップで企業数が最も多かった産業分野は医療である。コロナ禍で注目度も上がり、上場スタートアップの増加で個人投資家の選択肢も広がる。ゲノム(遺伝情報の全体)に関連する研究を基礎とする有力企業の上場(ゲノムSPAC)が目を引く。合成生物学を基礎に細胞を遺伝子レベルで自由に設計するギンコ・バイオワークス(ボストン)や、遺伝子検査サービスの23アンドミー(シリコンバレー)などだ。またソフトウエアで病気を治療する「デジタル薬」系スタートアップも複数上場しており、日本でも今後注目を集めそうだ。
【ポイント】
- SPAC(特別買収目的会社)上場したスタ一トアップで最も企業数が多いのが医療分野だ。ビジネスの対象領域はがん治療薬など医薬品開発が多く、医療サービス、医療機器、そしてカンナビス(大麻)関連が続いた。コロナ関連も散見される。
- ゲノム(遺伝情報の全体)に関連する研究に基づく企業の上場(「ゲノムSPAC」)も目を引く。評価額が最も大きかったのはギンコ・バイオワークス(ボストン)。「合成生物学」を応用して遺伝子レベルで細胞を設計・改変する。モデルナと提携するなど、コロナウイルスのmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン製造でも活躍している。
- 検査サービスでは遺伝子レベルで病気の発症リスクなどを分析するサービスが注目で、23アンドミー(シリコンバレー)は英ヴァージン・グループ系のSPACと統合した。検査を通じて集めた遺伝情報は、医薬品の開発にもつなげる。
- ソフトウエアで病気を治療する「デジタル薬」系スタートアップも複数上場する。ペア・セラピューティクス(ボストン)などで、アプリを通じて患者の行動変容を促す仕組み。
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