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Discussion Paper Discussion Paper 106 (2006.11)

[No.106] 企業における社会保険料の増加が雇用に与える影響に関する分析 ――日本企業の財務諸表データを用いて

金明中/研究員
   

2006/11/01

要 旨

 出生率の低下と平均寿命の上昇などによって人口減少社会へ突入し、超高齢社会を目の前にしている日本では、社会保障制度の改革が急速に進められている。特に、改革における主なポイントは保険料の引上げと給付の削減という点に集中しており、今後保険料を支払う現役世代と企業の負担はますます増加することが予想されている。制度上では保険料負担は雇用者と会社が折半していることになっているが、実際にはどちらが負担しているのか。これを経済学では帰着問題と呼び、海外では多くの研究がなされてきたが、未だ決着がついていない問題である。そこで、日本の1984 年から2003 年までのデータを用いて、保険料が引き上げられた状況を社会的実験としてみなして、負担が雇用者に帰着していた可能性を検討した。分析結果は、企業が負担分の増加を回避するために雇用者数を減らしたことが確認されたことから、保険料引き上げの負担が雇用者に帰着したことを示唆した。
 この分析の特徴は、①財務諸表等の上場企業のデータをマッチングさせて長期間のパネルデータを構築したこと②パネルデータを用いて社会保険料の雇用への帰着を実証分析したこと③社会保険料が雇用に与える影響を全雇用者と正規雇用者に区別して比較分析したことなどが挙げられる。