要 旨
本研究では、日本経済研究センターの産業別データベース(JCERデータベース)を利用し、設備の更新とそれに伴う資本の質の向上について多面的に分析を行った。
まず、資本のヴィンテージ(経過年数)をみると、非製造業では単調に設備年齢が上昇しているのに対し、製造業では80年代に設備投資が活性化したため一時的にヴィンテージが低下する形で循環性が見られた。また、機械資産に限定してヴィンテージを計算すると、90年代において非製造業のヴィンテージが製造業のヴィンテージを下回るようになり、非製造業でも循環性が確認された。これは、通信業やサービス業等で技術革新を体化した機械投資が活発化したことを示していると考えられる。
また、設備の平均更新期間は80年代後半から90年代前半にかけて活発な設備投資を受け一時的に低下したものの、全体としては長期化の傾向が見られた。
さらに、資本の質を考慮した生産関数を推計したところ、資本の質の上昇が労働生産性の上昇に正で有意な影響を与えていることが示された。さらに、設備年齢の上昇による資本の質の低下の度合いは、機械資本の方が建設資本よりも大きく、その度合いは非製造業よりも製造業においてより大きい点が示された。
最後に、更新投資関数の推計結果より、ヴィンテージの上昇に伴う資本の質の低下は更新投資を促進することが確認された。また、資金制約の効果も確認され、特に90年代において更新投資はキャッシュフローを媒介として資金制約を受けていたと考えられる。
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