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Discussion Paper Discussion Paper 091 (2005.11)

[No.091] 米経常赤字は維持可能か–3レジームに拡張したMarkov Switching Modelによる検討

竹内文英/副主任研究員
   

2005/11/01

要 旨

 拡大を続ける米国の経常赤字、対外債務の維持可能性(サステナビリティ)に世界的な関心が集まっている。この問題に接近する場合、Trehan= Walsh(1988、1991)、Ahmed=Rogers(1995)などを嚆矢とする、経常収支系列の定常性をチェックするというアプローチがあり、これまでに様々な検討がなされてきた。本稿では分析対象期間を通じた単純な単位根検定、あるいはPerron(1989)に代表されるような一定の構造変化を織り込んだ検定ではなく、近年景気の転換点分析などで活用されているMarkov Switching Model を応用したMarkov Switching ADFテストを採り上げる。Markov Switching ADF テストでは複数の定常・非定常状態が内生的(確率的)に発生すると想定するため、経済の実態をより正確にとらえることができる一方、全体として定常か非定常かという2分法ではなく、各時点の非定常状態(維持不可能性)の確率を示すことができるため、現実にも応用しやすい。同様の問題意識から経常収支のサステナビリティに関連してMarkov Switching ADF テストをいち早く採り上げた例として、Raybaudi=Sola=Spagnolo(2004)がある。ただ、分析対象期間を変更した場合に結果が大きく変化するという問題が残っていた。こうした分析結果の頑健性の問題は従来、経常収支に限らずMarkov Switching Model を採用する際に共通した問題として指摘されている。本稿では、非定常局面をさらに2パターンに分け、レジームを一般的な2(定常、非定常)から3(定常、非定常1、非定常2)に拡張することで、比較的安定的な結果を導くことができた。以上の分析から、現在の米国の経常収支赤字は90 %以上の確率で維持不可能な状態にあることが明らかになった。

キーワード:経常赤字の維持可能性、Markov Switchig ADF テスト1