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Discussion Paper Discussion Paper 084 (2003.04)

[No.084] 日本の輸出の構造変化と、比較優位、海外直接投資の影響について

竹内文英/副主任研究員
   

2003/04/01

要 旨

1.近年、内需が低迷するなかで、アジア向けなどの堅調な輸出が日本経済を下支えしていると考えられている。しかし、中長期的に見た場合、輸出のパフォーマンスの評価は大きく異なる。1990 年代半ば以降、日本の輸出の伸びは鈍化しており、これは、他の先進諸国の輸出の伸びとの比較はもちろん、輸出の有力な説明変数のひとつである世界輸入の伸びとのかい離を通じて容易に確認できる。
2. 日本の輸出の伸びの鈍化は、実質世界輸入(所得要因)はもちろん、実質為替レート(価格要因)でも説明できない構造的な要因によると考えられる。一方、他の主要先進諸国の輸出の変化は、以上の所得・価格要因でおおむね説明できる。
3.日本の輸出財の構成と相手国・地域の輸入財の構成をもとに算出した「比較優位の補完度」の低下によって、日本の輸出の伸び悩みが説明できる。この補完度は地域別、財別に分解できるが、それによると、地域別では先進諸国にキャッチアップしつつあるアジアとの関係において、財別では日本が比較的競争力を維持していると思われてきた中間財・資本財において、補完度の低下が目立つ。
4. 比較優位構造の補完度は、対外直接投資により日本の海外生産比率が高まるとともに低下する傾向が見られる。直接投資が貿易に与える効果としては、①中間財・資本財の輸出誘発効果②完成品の輸出代替効果③逆輸入効果――などが挙げられるが、データの制約等により各効果の時系列的な変化はとらえにくいとされてきた。財別に積み上げた補完度の動きから直接投資と実質輸出の関係を解釈すると、現地企業の現地あるいは第3国からの調達が進み、日本からの中間財・資本財の輸出誘発効果が急速に低下している可能性が示唆される。
5.以上のような輸出の構造変化を問題にするのは、これが、いわゆる「空洞化」問題を考える上で有益と考えるからである34。輸出に対する低下圧力は90 年代半ば以降、急速に強まっている。製造業では輸出競争力を持つ新たな比較優位製品の創出に時間がかかる一方、日本国内では規制緩和などの改革が遅々として進まず、製造業を代替すべき非製造業の生産性も十分に高まっていない。 6.製造業がコストの安い海外に移転するのは不可避の流れといえるが、それが一気に加速すると、新たな産業へのバトンタッチが間に合わない。製造業の対外直接投資の決定要因を日米で比較したところ、日本の製造業は実質為替レート(相対価格)の増価に敏感に反応している。規制緩和の徹底などを通じ、国内の高コスト構造を是正する努力が求められる。