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Discussion Paper Discussion Paper 082 (2002.12)

[No.082] 何が日本家計の危険資産選択を抑制しているのか–借り入れ制約の同時決定プロビット・モデルと危険資産選択のType3 Tobitモデルによる検証

白石小百合/研究員
   
松浦克己/横浜市立大学、郵政研究所
   

2002/12/01

要 旨

本稿は、日本の家計のマイクロデータを用い、借入制約が家計の危険資産選択に与える影響に関する実証分析を行う。日本の家計資産の構成をみると、高度成長期の出発点では家計は株式投資を積極的に行っていたにも関わらず、金融資産に占める危険資産比率が長期的に低下し、投資家のすそ野も広がらないという「リスク・プレミアム・パズル」と言われるような状態にある。日本の家計がかなりリスク回避的であるとする議論もあるが(中川・片桐[1999])、それでは出発点を説明することはできないことから、家計を株式市場から遠ざけた要因としては、日本の株式市場や社会経済制度が考えられる。本稿は、その要因の一つとして、戦後の日本の金融システムが、企業への資金供給を専らとし、消費者信用をあまり供給してこなかった点に着目した。具体的には家計が借入制約・流動性制約に直面するならば、家計は、将来の生活資金を確保するために非流動的な危険資産保有を抑制する可能性を検証した。借入制約関数の推計と危険資産保有・需要関数の推計を行った結果、借入制約確率の高まりが危険資産保有確率を低下させ、危険資産保有世帯のすそ野の広がりを抑制していることが指摘できる。