要 旨
本稿は、近年特にその動向が注目を集めており、社会的にはしばしば景気とまさに同一視されている「株価」の景気指標としての有効性について、90年代以降の月次データを用いて実証的に検証を行うものである。まず、株価変動を代表的な月次の景気統計と比較した。時差相関係数を計測したところ、株価はCI一致指数と鉱工業生産指数に対して8か月、全産業活動指数に対して1-2か月先行していることが示された。また、Granger因果性テストを行った結果、株価は全産業活動指数に対して先行性を有していることが示された。続いて、景気後退期を1、景気拡張期を0とする0/1変数を被説明変数としたプロビット・モデルの推定を行った。推定の結果、株価は前年同月比で見た場合が最も説明力が高く、そのとき景気に対して5か月先行していること、単独での説明力は内閣府で採用されている他の先行指標よりも高いことが示された。ただし、現在内閣府のDI先行指数で用いられている「株価の前年同月比の3期前との比較」は前年同月比に比べて説明力が大きく落ちるため、この点は早急な改善が望まれる。
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