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Discussion Paper Discussion Paper 074 (2002.02)

[No.074] 日本を巡る自由貿易協定の効果–CGEモデルによる分析

堤雅彦/内閣府政策担当官(コロンビア大学大学院留学中)
   
清田耕造/横浜国立大学経営学部専任講師
   

2002/02/01

要 旨

 本稿は、応用一般均衡(Computable General Equilibrium: CGE)モデルを利用し、日本を取り巻く自由貿易協定の経済効果を定量的に分析したものである。本稿の貢献は、従来から行われている貿易自由化の効果だけでなく、近年重要性が指摘されている国際生産要素移動(直接投資と国際労働移動)の効果についても考察している点にある。
 分析に用いたモデルはGlobal Trade Analysis Project (GTAP)で広く用いられている標準モデルに1)資本蓄積の内生化,2)外生的な国際生産要素移動(直接投資と労働)という新たなモジュールを試験的に導入したものである。データセットにはGTAPのVersion4.0と基準年の1995年における各種データを併せて利用した。分析のシナリオは、日本とシンガポールで取り交わされた新時代経済連携協定を始めとする九通りの自由貿易協定であり、それぞれのシナリオについて貿易自由化、労働移動、直接投資に伴う技術移転、そして一部では対外バランスの是正を織り込んでいる。
 分析の結果、アジア地域における要素移動を含めた地域自由貿易協定は、一般的に参加国に利益を与えることが明らかになった。また、非参加国への影響は限定的であるが、それらの国々も協定に参加することで利益を得ることが確認された。これらの結果より、地域的な自由貿易協定は、非参加国に対しても参加を促し、更なる自由化への足がかりになると考えられる。
 ただし農業分野については、自国の輸入関税と相手国の輸出補助金という二つの政策手段が存在しており、自由化の進め方によって利益配分が異なるという戦略的な側面があることがわかった。さらに、当該財の総輸入や世界市場に占める割合が大きいために、小国の仮定にもとづく議論が成立しない可能性があることも確認された。農業部門については、貿易自由化だけでなく、規制緩和やさらなる競争の導入など幅広い議論が必要と言えるだろう。