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金融研究

FRBの金融政策正常化で米長期金利は4%超も―資源高騰と円安で日銀の緩和維持が「自国窮乏化」につながるおそれ―

2021年度金融研究班報告③:米金融正常化と日銀の政策

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
総括:梶田 脩斗
  副主任研究員
研究生:間場 紗壽、生川 貴一
   

2022/03/18

米連邦制度理事会(FRB)は3月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でおよそ2年ぶりにゼロ金利の解除を決定した。今回のFOMCの注目点であった量的引き締め(QT)の詳細な計画については公表が見送られたが、5月からのQT開始が予告された。今後の米国の長期金利の動向はQTの進め方がカギを握る。本リポートでは、今後の米QTがどの程度米国の長期金利を押し上げるかを試算する。

日本では、日本銀行の新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの大部分が3月末に終了することで、今夏にもマネタリーベースの減少が見込まれる。日銀はオーバーシュート型コミットメントの下で、「コアCPIの前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」としていることから、マネタリーベース減少については「検証」と「説明」が求められよう。

FRBは金融政策の正常化に乗り出したが、日銀は当面金融緩和の姿勢を維持するとみられる。対照的な日米の金融政策運営は日本の金融政策の「相対的緩和度」を高め、円安圧力を生じさせる可能性がある。日本の交易条件(輸出物価と輸入物価の比率)は悪化が続いており、これに伴う実質所得の流出額は21年度初めから累積でGDP比率3.2%(17兆円)にのぼっている。資源価格の高騰と円安傾向が持続すると、所得流出額がさらに拡大して経済を下押しするリスクが高まる。円安は輸入物価の上昇を通じて2%物価目標の達成に寄与するが、物価目標を重視しすぎると経済厚生を損ねることにもなりかねない。

25年末までに米長期金利は3.5%から4.5%まで上昇も