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金融研究

米金利上昇で日銀の指し値オペ0.25%は維持困難に
―イールドカーブ・コントロールの見直し必要―

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
総括:梶田 脩斗
  副主任研究員

2022/04/22

《ポイント》

  • 日本銀行は4月20日、連続指し値オペを公表した。金融政策決定会合の直前まで続ける。米国で利上げ観測が高まる中で、日銀が長期金利を0.25%以下に抑える現行のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を維持しようとすれば、国債買い入れの限界に直面することになる。
  • 米国の金利上昇は日本の長期金利の上昇圧力となる。過去の日米金利の関係から機械的に計算すると、今後FRBの量的引き締め(QT:Quantitative Tightening)が市場参加者の見通しに沿って進んだ場合、日銀が指し値オペを実施しなければ日本の10年物金利は足元の0.25%から23年末には0.6%程度にまで上昇する可能性がある。
  • だが、日銀が指し値オペで長期金利を許容変動幅の上限である0.25%以下に抑えようとすれば、日銀は23年末までに長期国債の保有残高を120兆円弱増やす必要がある。日銀が3月末に保有する長期国債(額面ベースで500兆円)のうち、23年末までに償還を迎える国債は115兆円であるため、ネットで120兆円増やすには、流通市場から2倍の額を買わなければならず、国債市場の規模から考えても現実的な選択肢とは言い難い。米長期金利の見通しと日本の長期金利への影響を考えると、現行のYCCは継続が困難となっている。仮に、日銀が長期金利の上限を0.5%まで引き上げた場合、23年12月までに追加で購入する国債はネットでは30兆円程度で済む。

 

長期金利の上限を0.5%に引き上げると、国債購入を7割減らせる