一覧へ戻る
金融研究

世界的な金利上昇で債券損益はリーマン・ショック時並みの赤字に
―日銀から地域銀行への付利総額、制度見直しで22年度は4割減も―

2022年度金融研究班報告①:銀行決算分析(22年3月期)

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
総括:梶田 脩斗
  副主任研究員
研究生:竹腰 大貴、津富 敦
   

2022/09/27

2022年3月期(2021年度)の全国銀行の税引前の最終利益は前年比19.1%増の2兆9,865億円と、コロナ禍前の水準を回復した。粗利益は前年比で微増にとどまったが、店舗の削減やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に伴う人件費の抑制が最終利益を押し上げた。資金調達コストの減少で資金運用差益は増加したが、手数料収入などで構成されるその他差益は前年比14.7%減少した。世界的な金利上昇を背景に外国債券の価格が下落し、国債等債券関係損益がリーマン・ショック時並みの赤字に転落した。海外金利が高止まりするようなら、22年度の収益を圧迫するおそれがある。大手銀行を中心に国外での貸し出しを伸ばしていたことで、今後はロシア関連の信用コストの増加が収益を下押しするおそれもある。国内ではコロナ関連の融資が焦げ付くリスクが残っている。

コロナ禍で短期国債の発行が大幅に増えていたことを背景に、都市銀行の保有国債は短期化した。これに対し、地方銀行・第二地方銀行では貸出金、保有国債ともに長期化が進んでいる。地銀・第二地銀が抱える金利リスク量が増大している点が懸念される。地銀・第二地銀は「地域金融強化のための特別当座預金制度」と「貸出促進付利制度」の下で、最終利益の約7%にあたる800億円超の追加利息を日本銀行から受け取ったが、22年度は制度見直しにより受け取り額が4割減少し、500億円を割り込むとみられる。