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朝鮮半島リポート 【朝鮮半島リポート】 (第35回)

北朝鮮経済、建設事業頼みの「自力更生」

――大衆動員で体制安全保障にも活用

朝鮮半島・北東アジア研究会
   

2022/10/13

 北朝鮮は弾道ミサイル発射などで西側諸国との対立を深める一方、経済運営では「自力更生、自給自足」の姿勢を強めている。金正恩(キム・ジョンウン)政権が当面は対外経済関係の発展が見込めないことを前提に力を注いでいるのが住宅などの国内建設事業で、ここにきて国の東西を連結する大運河建設構想も急浮上した。大規模建設プロジェクトには集団主義による大衆動員で体制の安全保障に役立てる思惑も見え隠れし、経済制裁で圧力をかける日米などとの綱引きが展開されそうだ。

【第35回のポイント】

① 北朝鮮経済は制裁や新型コロナなどの影響でマイナス成長が続いている。分野ごとの差があり、鉱工業の不振が続く一方で、建設業はプラス成長と推定されている。住宅や水力発電所など国が推進する大規模建設プロジェクトがリード役だ。

② 北朝鮮の建設事業は「自力更生、自給自足」の経済路線とも密接な関係がある。対外関係が悪化する中、原料・資材の国内調達を進めており、とくにセメントの国内生産に力を入れている。国内資源のセメントとマンパワーで事業を推進する方針だ。

③ 金正恩総書記は国の東西を連結する大運河の建設を検討する考えを示した。北朝鮮における大規模建設プロジェクトには、集団主義による大衆動員で体制の安全保障に役立てる政治的な狙いも見え隠れするが、事業性を無視した計画が経済をさらに悪化させる可能性も否定できない。

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