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中国・アジアウォッチ

中国、ゼロコロナ政策の緩和避けられず

――検査は有料に、国民の負担増で社会不安も

湯浅 健司
  首席研究員兼中国研究室長

2022/11/18

 中国で新型コロナウイルスの感染者が再び増加している。11月に入って南部の広東省を中心に感染が拡大し、勢いは増すばかりだ。感染者が出ればその地域を封鎖する「ゼロコロナ政策」は相変わらずで、一部では封鎖に反発した市民による暴動が起きたとの報道もある。封鎖のない地域でも人々は日常的にPCR検査を強いられるが、地方政府は負担してきた検査費用を賄いきれず受診者に転嫁する動きも出始めた。経済の減速が続き失業者の増大など日常生活に影が差す中、費用負担という新たな重荷が加われば、国民の不満は一層強まる。社会不安を最も恐れる中国指導部は、もはやゼロコロナ政策の緩和に動かざるを得ない状況にある。

【ポイント】

  1. 中国で再び新型コロナウイルスの感染者が増加し、17日には2万5129人とこの2週間で約10倍に膨らんだ。ゼロコロナ政策により封鎖された地域では暴動が起きたとの報道もある。
  2. 中国ではほぼ全国でPCR検査の受診が日常生活のうえで欠かせないが、費用の負担増に耐えられない地方政府は市民への自己負担を求め始めた。低収入の人々にとっては大きな問題で、ゼロコロナ政策の限界がますます顕著になってきた。
  3. 経済の減速は止まらず、特に失業率の高止まりは社会不安をもたらしかねない。その最大の要因であるゼロコロナ政策の見直しは避けられない。それは来春に誕生する李強・新首相の最初の大仕事となるだろう。
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