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金融研究

日銀、特別当座預金制度で地銀・第二地銀92行に540億円の付利

―2022年度分試算、制度見直しで25%減―

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
委託研究生:竹腰 大貴
   

2022/11/25

<<ポイント>>
  1. 日本銀行の「地域金融強化のための特別当座預金制度」の下で、2022年度分(22年9月~23年8月)は地方銀行・第二地方銀行計99行のうち、92行が特別付利の対象となることがわかった。22年3月期の地銀決算および最近の日銀当座預金残高から試算すると、付利総額は9月から23年8月までの1年間で540億円にのぼる見通しである。これは、地銀・第二地銀のコア業務純益の4%弱に相当する。
  2. 特別付利の対象となる92行のうち、90行は経費削減や収益力強化を求める「OHR要件」を、2行は合併や経営統合などを求める「統合要件」を満たしている。22年度分の付利金額は92行で460億円。さらに、21年度にOHR要件を満たさなかった金融機関でも、22年度に満たしていれば過去にさかのぼり特別付利が受けられるため、22年度分に過年度分の80億円(対象は9行)が上乗せされる。21年11月の制度見直しを受けて、22年度分の付利総額は約25%減少する。
  3. 特別当座預金制度を利用する地域金融機関は日銀から0.1%の特別付利が受けられるため、地銀・第二地銀を中心に、コール市場で調達した資金を日銀当座預金に積み上げる動きが活発になっていた。地銀・第二地銀のOHRはここ数年改善しており、同制度の創設が後押ししていた可能性がある。しかし、特別当座預金制度は3年間の時限措置で、制度終了後は経営改善効果が弱まる可能性がある点に注意が必要である。また、物価安定を目指す金融政策と金融システム安定維持を目指すプルーデンス政策の間で足並みが乱れることは避けなければならない。

【地銀・第二地銀に支払われる特別付利】

(注1)2022年度分の対象先は地方銀行56行、第二地方銀行36行の計92行(統合要件での対象先を含む)。
(注2)過年度分の対象先は地方銀行7行、第二地方銀行 2 行の計 9 行。
(資料)NEEDS-FinancialQUEST、各行ディスクロージャー誌・決算短信資料、日本銀行「業態別の日銀当座預金残高」