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金融研究

YCC解除なら長期金利は0.8~1.1%、企業・財政に余波

―世界的なインフレの進行で迎えた大規模緩和の修正―
2022年度金融研究班報告②:YCC見直し後の金融政策

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
総括:宮﨑 孝史
  副主任研究員
研究生:竹腰 大貴、津富 敦
   
コーディネーター:阿部 眞子
  研究員

2022/12/27

日銀は2022年12月19~20日に開いた金融政策決定会合で、これまでゼロ%を中心に±0.25%としていた長期金利の許容変動幅を±0.5%に拡大し、事実上の利上げに踏み切った。世界的なインフレの進行で欧米の主要中央銀行が利上げに動くなか、日本の長期金利にも上昇圧力がかかり、日銀の国債買い入れは長短金利操作付き量的・質的金融緩和(YCC。通称「イールドカーブ・コントロール」)政策の下で増大していた。国債市場の機能低下や急激な円安の進行など、YCCの副作用も目立っていた。YCCの効果は長期金利の許容変動幅拡大後も新発10年国債に限定され、イールドカーブはゆがんだままである。

12月の日銀の決定を踏まえ、長期金利の上昇が企業の設備投資や財政の持続可能性にもたらす影響を試算した。YCCが解除されれば日本の長期金利は0.8~1.1%まで上昇し、利払い負担の増加が企業の収益や設備投資を下押しする。また、政府部門でも財政の持続可能性が低下する。足元のイールドカーブ・ギャップ(実際の実質イールドカーブと均衡イールドカーブの差)は長期のゾーンで中立的な金融スタンスとなっている。YCC解除に当たっては、過度な引き締めとなることを避ける必要がある。日米欧のインフレの鎮静化にはなお時間を要すると見込まれるだけに、政府と日銀はこれまで以上に足並みを揃えて財政・金融政策運営に当たることが求められる。

【YCCの下押し効果は新発10年国債に限定】

(資料)Bloomberg