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金融研究

日銀のETF保有、信託報酬は累計3,000億円に

―分配金収入は初の1兆円台乗せ、国債利息と並ぶ水準に―
―損益分岐点は日経平均2万円弱で変わらず―

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
2019年度委託研究生:中野 雅貴
   

2022/12/07

<<ポイント>>
  1. 日本銀行が保有する上場投資信託(ETF)は2022年11月末で時価51兆8,494億円に達した模様である(簿価は36兆円)。将来、損失引当金を積む必要が生じる損益分岐点は、日経平均株価ベースで19,891円。日銀が公表したETFの分配金収入は22年4-9月期で前年同期比31%増の1兆153億円となり、2010年の購入開始以来、初めて1兆円の大台に乗せた。分配金収入は年度前半に集中するため、21年10月以降の1年間で見ると、同じ時期の国債利息(1兆1,711億円)にほぼ並んだ。
  2. ETFの分配金収入からは、日銀が負担する信託報酬があらかじめ差し引かれている。信託報酬は日銀が資産運用会社と信託銀行に支払う手数料のことで、有価証券届出書に記載されたETFの銘柄別の信託報酬率と日銀の買い入れ額などから、これまでに負担した信託報酬を試算したところ、10年12月15日の購入開始から22年11月末までの12年間で累計3,060億円となった。信託報酬の支払い額が最も多かったのは21年度の580億円。22年度は11月までの累計を年換算して520億円となる見込みである。
  3. 日銀は12月からETFの買い入れ方法を見直した。信託報酬率の最も低いETF銘柄が買い入れの対象となる。資産運用会社の間では22年度に入り、信託報酬率の引き下げが相次いでいる。新規に買い入れる分(フロー)の信託報酬と、過去に買い入れた分(ストック)にかかる信託報酬から試算すると、日銀は今後、ブラックロック・ジャパンのETFを購入するとみられる。実際、12月2日の買い入れでは同社のETFを選択したとの一部報道もある。

【日銀保有のETFにかかる信託報酬の推移(試算値)】

(注)2022年度は2022年11月末までの実績を年換算した値。
(資料)日本銀行、Bloomberg、EDINET