<<ポイント>>
- 国内銀行110行の2050年までの気候変動リスク(移行リスク)の影響を試算した。運輸、石油・石炭、電力・ガス・水道など7業種に限定すると、国内銀行には2050年までに脱炭素移行関連の与信コストが新たに7兆円程度発生する。単年度では約2,500億円。コロナ禍を除く過去5年間の業務損益との比較で見ると、大手行(5%)よりも地方銀行(14%)や第二地方銀行(17%)の負担が大きい。
- 産業別には運輸、鉄鋼、輸送機械などで与信コストが大きく、これらの業種への貸し出しが比較的多い西日本や中部地方の地銀・第二地銀の負担が高まる。多いところでは毎年の業務損益を2割超圧迫する可能性がある(国内銀行のうち22行程度)。
- 人口減少と超低金利の長期化で、地銀・第二地銀は厳しい経営環境に置かれてきた。足元では日銀の特別当座預金制度などが収益低迷を防いでいるが、今後、気候変動リスクが本格的に顕在化するようになれば、収益のさらなる低下は避けられず、地域金融機関の再編を後押しする要因となりそうだ。
【気候変動リスク(移行リスク)関連の与信コスト】
(注1)日経金融工学研究所の気候変動シナリオ分析モデル「CRIS」により試算した。国内銀行各行の業務損益はコロナ禍の2019 年度、2020 年度を除く2015 年度~2022 年度の平均値を使用。
(注2)2021 年度実績から増加した貸倒引当金を全額、気候変動リスク(移行リスク)によるものと仮定した。
(資料)NEEDS-FinancialQUEST、NGFS、日本政策投資銀行『全国設備投資計画調査』、各業界代表企業開示資料、日本銀行、内閣府『経済活動別県内総生産』
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