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金融研究

YCC の見直し急務だが、家計や銀行への負荷高める側面
住宅ローン変動金利1%上昇は繰り上げ返済確率を25%高める

―保有有価証券の長期化で地域銀行の金利リスク量も増大―
2022年度金融研究班報告③:植田新日銀の課題

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
総括:宮﨑 孝史
  副主任研究員
コーディネーター:阿部 眞子
  研究員
研究生:竹腰 大貴、津富 敦
   

2023/03/24

日本銀行は4 月から植田和男・総裁を迎えて、新たな体制に代わる。植田新日銀の課題は現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブ・コントロール、通称「YCC」)政策の見直しである。昨年12 月のYCC 見直し後も長期国債の買い入れは増加が続き、イールドカーブのゆがみは解消されていない。債券市場の機能度も過去最低を更新し、市場機能の低下は社債や地方債の起債市場にも波及している。金融市場のストレスは全体としては依然として低位だが、為替市場 や国債市場でボラティリティが高まっている。
本リポートは、昨年12 月に金融研究班が公表したリポートの続編である。前回のリポートでは日銀がYCC を解除した場合の企業部門と政府部門への影響に着目したが、本リポートでは家計部門と銀行部門への影響について実証的な分析を試みた。金利の上昇は家計の住宅投資を減少させるほか、住宅ローンの繰り上げ返済確率を高める。また、地域金融機関は保有有価証券の平均年限を長期化させたことで相応の金利リスク量を抱え、金利上昇に対して脆弱になっている。足元では米国銀行の破綻をきっかけとした金融システム不安が欧州にも広がっており、日本にも悪影響が波及するリスクに注意を要する。

【預金は短期化、債券の平均残存期間は地域銀行で大幅に長期化】

(資料)各社ディスクロージャー誌