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- 今年3月に申請期間が終了した日本銀行の支援策「地域金融強化のための特別当座預金制度」の下で、日銀から地方銀行や信用金庫など地域金融機関に支払われる上乗せ金利(特別付利)は付利開始の2021年度から26年度までの約5年間で総額2,500億円にのぼることがわかった。このうち、地銀と第二地銀への特別付利の総額は、財務データから試算したところ、約2,000億円に膨らんだ。
- 22年度決算に基づき付利の支払いが始まる23年9月からの1年間では、地銀・第二地銀全体の94%に当たる93行が特別付利の対象となる。このうち91行は経費削減や収益力強化を求める「OHR(Over Head Ratio)要件」を、16行は合併や経営統合などを求める「統合要件」を満たした。23年3月期の決算および最近の日銀当座預金残高から試算すると、24年8月までの1年間に日銀から支払われる特別付利は583億円にのぼる。これは、22年度の地銀・第二地銀のコア業務純益の4%弱に相当する。 ただし、こうした利益のかさ上げ効果は、大半の地域金融機関では24年度前半で消失する。
- 本制度は申請の対象期間を23年3月期までとする3年間の時限措置だったが、「OHR要件」を3年間満たした金融機関が申請期間が終了する23年3月末に「統合要件」を満たせば最長4年8か月、日銀から特別付利を受け取ることになる。最高額は地銀大手の約180億円で、今月初めに金融庁が公表したきらやか銀行への公的資金注入額に匹敵する。
- 制度導入以降、地銀や第二地銀のOHRは大幅に改善した。地域金融機関にとって、24年度以降も経営体力を維持できるかが課題となる。そもそも、本制度の特別付利は「地域経済の持続的な発展に貢献する方針である」ことが前提となっていた。将来的には、総額2,500億円にのぼる地域金融機関への支援が地元経済の発展につながっていたか、についても検証する必要があるだろう。
【付利対象行の推移】
(資料)日本銀行、NEEDS-FinancialQUEST、各行ディスクロージャー誌・決算短信関係資料
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