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金融研究

22年度は海外金利の上昇で都銀に恩恵、地域銀は逆風
―異次元緩和10 年で都銀と地域銀の体力格差が拡大―

2023年度金融研究班報告①:銀行決算分析(23年3月期)

主査:左三川(笛田) 郁子
  金融研究室長兼主任研究員
総括:阿部 眞子
  研究員
研究生:高椋 草美、廣芝 大慧
   

2023/10/06

2023年3月期(2022年度)の全国銀行の最終利益(税引前当期純利益に相当)は前年比48.3%増の4兆4,292億円と、3年連続で改善した。粗利益を構成する資金利益が前年比8.7%増の8兆2,137億円と、14年度以来の水準に膨らんだ。特に都市銀行の海外業務部門で貸出金が増加したことが、全国銀行の資金運用収益を押し上げた。業態別にみると、都市銀行の粗利益は前年比17.9%増加したが、地方銀行では10.8%減、第二地方銀行でも4.9%減少した。地銀・第二地銀では海外金利の上昇を受けて国際部門の国債等関係損が急激に膨らみ、国内部門を合わせた粗利益全体を押し下げた。全国銀行の営業経費は前年比横ばいだったが、預金保険機構による預金保険料率引き下げという特殊要因を除くと、22年度は前年比3.0%と6年ぶりの増加幅となった。日本銀行の「異次元緩和」10年で都銀と地銀・第二地銀の体力格差が拡大した。地銀・第二地銀の資産は貸出金も国債など有価証券も長期化したままで、24年以降も欧米の長期金利が高止まり、国内の長期金利がさらに上昇すると、追加的な引き当てや評価損が発生する恐れもある。



【業態・部門別 粗利益】

(資料)全国銀行協会