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- 日本銀行は10月31日に開いた金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正を決めた。長期金利の目標を引き続きゼロ%程度とする一方で、「変動幅」という表現を削除し、長期金利の「上限のめど」を1%とする方針に改めた。前回会合までの「事実上の上限」だった1%をめどに緩めたことに伴い、これまで毎営業日アナウンスしていた「連続指し値オペ」を、金利の実勢等を見ながら機動的に実施する「指し値オペ」に切り替えた。YCCの運用をさらに柔軟化し、長期金利が1%を超えて上昇するのを容認することで、日銀は非伝統的金融政策からの出口に向けてさらに一歩前進したと言える。
- 日銀がYCCの再修正に踏み切った背景として、①YCCの下で日銀が長期金利の上昇を抑えた結果、日米の金利差が開き、これが過度な円安につながっていたため、政府との足並みを揃える必要があった、②足元で米国の長期金利が上がっており、さらなる円安や国内金利上昇の恐れがあった、③長期金利の上昇を抑えるための国債買い入れが膨らみ、日銀のバランスシート拡大が加速する恐れがあった、――ことなどが考えられる。
【日米長期金利差は再び拡大し4%を超えていた】
(資料)日経NEEDS-FinancialQuest
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