一覧へ戻る
経済百葉箱 第120号

通商政策の不確実性が招く貿易停滞

―追加関税はわが国輸出の逆風に―

宮﨑孝史 、<監修>短期経済予測主査:西岡 慎一
   

2018/07/25

▼ポイント▼
●米国の通商政策を巡る経済への悪影響が懸念されている。すでに実施されている政策(①米国の鉄鋼・アルミニウム関税引き上げと各国の報復措置、②米中による関税引き上げ)が米国経済に及ぼす影響は限定的との試算がある。一方、米国で現在検討されている③中国製品への一段の関税引き上げは、米中両国の成長率を相応に下押すと試算されているほか、④自動車関税の引き上げが各国の報復措置を招く場合、米国の成長率を大きく下押しし、わが国の輸出にも悪影響が及ぶと考えられる。
●こうした通商政策を巡る不確実性の高まりやその長期化は、企業マインドの悪化や企業の「様子見」姿勢などを通じて、貿易取引を抑制する可能性がある。実証分析の結果をみても、米国の経済政策の不確実性が拡大すると、世界貿易量が下押しされ、わが国の輸出にも有意に負の影響を及ぼす効果がある。この効果は、特に資本財や情報関連の輸出に強く生じる。したがって、通商政策が発動される前の段階で、わが国の貿易取引に悪影響が生じうる点にも必要である。

■経済百葉箱 番外編 2018 (2018/7/3 発表)
「経済百葉箱」は当センター経済予測班による分析リポートです。このうち「番外編」は、新年度から研修を開始した企業・団体からの派遣研究生が、「第一弾」としてまとめたリポートです。 第174回改訂短期経済予測(SA174R、2018年6月8日公表)、第44回中期経済予測(2018年3月23日公表)を踏まえ、3班に分かれて、異なるシナリオを描きました。 短期担当の2班は、米国とその他主要国との貿易戦争を起点とした「景気低迷シナリオ」と、中国経済の「量」から「質」へのシフトが周辺国経済に好影響をもたらす「好景気シナリオ」を示しました。中期担当の班は、無形資産の活用による成長シナリオを示しました。

詳細はこちら
短期予測①「外需」を失い、日本経済は失速へ―米国発の貿易戦争が深刻化―
短期予測②アジアの成長を取り込む日本経済―中国経済の「量から質への変革」に勝機―
中期予測①無形資産拡充で生産性向上へ―中小企業を導く2つのチカラ―


■経済百葉箱とは
日本経済研究センター経済予測班では、経済予測・分析の中で見えたトピックスに焦点を絞ったリポート、「経済百葉箱」を掲載しています。経済はしばしば気象にたとえられますが、「百葉箱」はご存知のように、気温や湿度を正確に測定するための箱であり、「観測」の原点となる存在です。本リポートは随時掲載します。

バックナンバー

2020/10/14

コロナ対策、早いほど少ない死者と経済損失

伊禮琢人、丸山大介、山本大輔 <監修>短期予測主査:稲葉圭一郎 総括:梶田脩斗

2020/10/05

休業者の雇調金打ち切りは失業増に

有田勇一 <監修>短期経済予測主査:稲葉圭一郎 総括:松尾朋紀

2020/06/11

貯蓄率上昇、19年ぶりの高水準に

圓花弘樹、山口修平 <監修>短期経済予測主査:西岡慎一 総括:田中顕

2020/05/27

気候変動対策は金融分野に拡大

嵯峨元成、佐藤洋介 <監修>短期経済予測主査:西岡慎一 総括:梶田脩斗

2020/04/09

インバウンド需要蒸発、20年度は9割減

圓花弘樹、黄盛凱、山口修平 <監修>短期経済予測主査:西岡慎一 総括:田中顕