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第38回(中間報告)中期経済予測(2011年度−2020年度)

エネルギー・国際分業、迫られる再構築
−除染費用、国民に重い負担

2011年12月2日発表

日本経済研究センター 中期予測班

我が国経済は東日本大震災から急速に回復しつつあるが、原発事故を受けてエネルギー供給の構成について大幅な見直しが迫られており、欧州における信用不安の広がりなどを背景に各国の成長率の見通しが下方修正されている。そうした中で、我が国経済は着実な成長を続けることができるだろうか?こうした問いに答えたのが今回の中期予測である。

@原子力発電所が2012年度初めまでにすべて停止する場合には、電力不足によって供給力が制約される。一方、既存原発の停止が回避される場合には、電力不足と供給力の制約を火力発電による代替や新エネルギーの導入で補うことが可能であり、着実な成長(10年間の平均成長率:1.1%)を見込むことができる。

A脱原発と継続、両者には絶対的な費用格差はない。2050年度までに脱原発を進める場合は、新エネ導入や火力代替にコストがかかる一方、継続では今後の事故リスクに備える費用が大きい。新エネの導入促進を前提にしたCO2排出量の削減、長期的なエネルギー供給の見通し、産業育成を考慮したエネルギー基本計画を作成するべきだ。新エネ普及を後押しするには、東北の被災地や全国の耕作放棄地、国立公園の活用について無税特区や立地規制の大幅な緩和が必要である。

B除染を実施すると土地を買い上げるよりも3−13倍の費用負担になる。その費用負担を電力料金の引き上げで賄うとすると民間活動は圧迫される。短期的には、除染費用が政府消費や公共投資として支出に回るため、実質GDP全体では影響がないようにみえる。それでも個人消費や民間設備投資は下押しされる。除染作業は最終処分を含めると10年以上にわたり続くことが確実で、長期的にはクラウディング・アウト(民間活動の抑制)し、GDPも抑制する恐れが強い。福島県の具体的な復興計画を作成する際に、除染の優先順位や原発事故の被災者への補償額が現状レベルで十分なのか、合わせて見直すべきである。

C海外経済の成長により生産拠点の海外移転は着実に増加することが見込まれ、円高が進めば海外直接投資が一段と加速する。国際競争の中では、海外生産とともに高い技術力を確保するためにある程度国内生産を維持し、バランスのとれた生産機能と技術革新力を保つことが企業レベルでも産業レベルでも重要である。それを可能にするためにも、日本企業が新たなグローバルサプライチェーンの再構築をしやすい環境づくりが重要であり、TPP交渉の場で、生産工程間の国際分業を伴う21世紀型の貿易・投資・知的財産に関するルールづくりを実現すべきである。

D財政健全化に関しては消費税率を10%に引き上げるだけでは債務残高GDP 比の安定化は果たせず、財政破綻のリスクは高まり続ける。10年代末には経常収支が赤字化する見通しが強まっている。これは財政赤字をまかなう国内貯蓄が細ることを意味しており、社会保障費の自然増も含め歳出入両面について更なる見直しと改革が必要である。

E1%程度の成長率しか期待できない中で、大幅な税率の引き上げは経済にとって大きな負担となりうる。消費税率の段階的引き上げについては、実務面では事業者の事務負担に与える影響に留意する必要があるが、経済へのショックを小さくする観点からは、消費税率の引き上げ幅を1%ずつにする方が望ましい。

※12月1日に公表した速報「復興需要と輸出で1%成長は維持−消費税率引き上げでも財政リスク解消せず、原発継続、脱原発とも年間負担は4兆円」はこちら



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