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読むゼミ

講演内容を文章に要約した抄録です。講演開催から2週間程度で掲載していますので、ご利用ください。
※読むゼミ原稿は、日経センター担当者が録音テープをもとにまとめ、講師のチェックを受けています。
※半年ごとにまとめて掲載しています。過去のセミナー(バックナンバー)は下の窓の「開催時期」から時期を選択いただき、ボタンを押すと表示されます。

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バックナンバー(開催時期)

2015年7月〜12月開催のセミナー

15年度日経・経済図書文化賞受賞
TPP時代のアウトソーシング
2015年12月18日(金) 開催  (掲載日:2016年1月13日)
日本経済研究センター
講師
冨浦英一・一橋大学大学院経済学研究科教授
要旨
海外企業との協業メリット追求、ますます重要に
@貿易か海外直接投資に加え、海外へのアウトソーシングという第3の道が拡大している。「影の移民」とも言われ、労働市場へのインパクトは大きい。
A日本企業で海外アウトソーシングに取り組むケースはまだ少なく、大企業に限られる。業務の透明性を高め、円滑な調整ができる人材を育成し、海外企業との協業メリットを追求するべきだ。
BTPPは原産地規則に完全累積制度を導入、内国民待遇を原則とするなど、モノ・サービス貿易、直接投資に関する広範なルールを決めた。アウトソーシングの活発化にも貢献しそうだ。
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資料
セミナー資料

ASEAN消費市場を読む―消費実態調査から
2015年12月10日(木) 開催  (掲載日:2016年1月14日)
日本経済研究センター
講師
森沢伊智郎・野村総合研究所消費サービス・ヘルスケアコンサルティング部長
要旨
ASEAN消費市場に新たな波―“新”中間層を取り込め
@東南アジア諸国連合(ASEAN)は国内総生産(GDP)・人口ともに成長していく魅力的なマーケットだ。我々の調査では、人々の消費意欲は、低所得層から中間所得層へ移るときにまず高まり、物的充足に伴い、いったん消費意欲が低下した後、再度高まることが明らかになった。2度目の高まりにおいては、従来の機能性を求める欲求とは異なり、「機能以外の価値」が重視される。
A中間所得層で特筆すべきは、消費に対し積極的で、こだわりをもつ“新”中間層だ。彼らはイノベーターやインフルエンサーとして機能し、今後のASEAN市場の発展をけん引する。
B日系メーカーは従来、前述の最初の消費意欲の高まりに合わせ、信頼感ある「日本」イメージで売り上げを伸ばしてきた。これからは、独自のブランドイメージを強化し、“新”中間層の価値観にあった商品・サービスを提供することで2度目の波を捉えねばならない。
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株価座談会
世界景気不安と日本株―2016年前半の相場展望
2015年12月2日(水) 開催  (掲載日:2015年12月3日)
日本経済研究センター
講師
菊地正俊・みずほ証券エクイティ調査部パン・アジアチーフ株式ストラテジスト
榊茂樹・野村アセットマネジメント運用調査本部チーフ・ストラテジスト
司会)今川京子・日本経済新聞社編集局次長兼証券部長
概要
 12月2日に日本経済研究センターが主催した株価座談会では、米利上げによる世界景気への影響は限定的との見方で一致しましたが、国内企業の業績に対する見方は明暗が分かれました。みずほ証券の菊地正俊氏は日経平均株価は年央に2万2000円の高値を付けると予想。野村アセットマネジメントの榊茂樹氏は2万円台は難しいとみていました。
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※PDF記事は、日本経済新聞社の許可を得て転載しています

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2016年の米国政治経済展望
2015年11月24日(火) 開催  (掲載日:2015年12月9日)
日本経済研究センター
講師
今村卓・丸紅米国会社ワシントン事務所長
要旨
経済は堅調、大統領選の争点は政治―共和党、政治家不信で異例の戦い
@2016年の大統領選挙の争点は政治問題が中心になりそうだ。米国経済はここ数年の金融政策の効果もあり概ね堅調と言え、大統領選挙で争点とされるほどの大きな不安材料は見当たらない。
A大統領選挙に向けて各党の指名候補争いに注目が集まりつつある。民主党はヒラリー・クリントン氏が優勢だが、共和党は予想外の混戦が続いている。当初有力と見られていた統治能力に定評のある州知事経験者は苦戦する一方、ポピュリストの中でも白人若年層からの支持を集める不動産王のドナルド・トランプ氏や、外科医のベン・カーソン氏ら非政治家候補の善戦が続いている。
B共和党の政治家候補の中では若いマルコ・ルビオ氏、テッド・クルーズ氏が上位につけており、今後、州知事・議員の推薦や選挙資金をどれだけ集められるかが注目される。異例の大混戦の今回は2月1日のアイオワ州党員集会、2月9日のニューハンプシャー州予備選を経ても指名争いの見通しが立たない可能性がある。
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セミナー資料

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フィンテックと銀行の将来像
2015年11月19日(木) 開催  (掲載日:2015年12月2日)
日本経済研究センター
講師
大野英昭・アクセンチュア金融サービス本部特別顧問
宮良浩二・アクセンチュア金融サービス本部マネジング・ディレクター
要旨
迫られる金融サービス再構築―外部の活用、企業文化の改革が不可欠
@ ITを活用する金融サービス「フィンテック」分野への投資は、米欧が日本に先行し、またIT企業を伝統的な金融機関が追いかけている状況。
A フィンテックの進展には既存のサービスの垣根を壊して、金融業務をアンバンドル(解体)するパワーがある。
同時に金融機関がフィンテックを活用し、非金融ニーズも含めた顧客のエコシステム(経済活動)全体の利便性を追求して金融サービスをリバンドル(再構築)していくなら、ビジネスチャンスを広げることが可能だ。
B 変化が速いフィンテックに取り組み、イノベーションを創出していく上で重要なのは、外部の知見を積極的に活用するオープンイノベーションという概念だ。 C またフィンテック分野への投資はリスクが高いため、安全を優先する企業文化を改革してトライ&エラーを許容するほか、経営のスピードを上げていく必要がある。

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中国経済の現状と2020年代の展望
2015年11月18日(水) 開催  (掲載日:2015年11月30日)
日本経済研究センター
講師
瀬口清之・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
要旨
「新常態」で安定成長―日本企業には大きなチャンス
@日本で中国経済に対する悲観論が強まっているが、私の見方は違う。中国経済は安定しており、日本企業には非常に大きなチャンスが訪れていると判断している。それを物語るのが訪日中国人客の「爆買い」だ。
A現在の中国経済は「新常態(ニューノーマル)」という方針の下で運営されている。経済成長目標を適正水準に引き下げたほか、投資の中味を適正化し経済構造を筋肉質に変えようとしている。これによりサービス業、自動車産業、IT(情報技術)産業などが伸びており、内陸部の発展も成長エンジンになっている。
B輸出不振などのリスクもあるが、雇用増→賃金上昇→所得増→消費増というサイクルにより、消費主導の安定成長が続くだろう。2020年までは6%程度の中高速成長が可能とみる。日本は中国が発展しなければ自国も発展できないことを認識すべきだ。

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製造業の近未来―IoTと人工知能がもたらす変化
2015年11月11日(水) 開催  (掲載日:2015年12月2日)
日本経済研究センター
講師
西川徹・Preferred Networks(PFN)代表取締役社長、最高経営責任者
要旨
分散協調による機械学習の進化―ロボット自身が考える未来へ
@IoT(モノのインターネット)の普及によるデバイスの進化、人工知能分野のディープラーニング(深層学習)の進化、分散協調型の新しいコンピューティング。三つの技術の融合によりPFNが目指すものは分散協調型の深層強化学習である。
A分散協調型の深層強化学習では、人は結果についての報酬(評価関数)を設計してやればよく、行動選択ルールの記述は自動的に行われる。また、複数のロボット間でリアルタイムでの学習結果の共有を可能にし、飛躍的に学習速度を向上させている。これまでデータの分析がほとんどだったが、制御の領域にも機械学習が使われるようになった。
B製造業の世界こそ人工知能は重要な意味を持っている。利用する環境が制限されており、実用化にもつなげやすい。分散協調型の深層強化学習の導入により、ロボット同士の協調や制御系など全体の最適化を目指したい。

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<大阪>中国経済の動向と課題
2015年11月6日(金) 開催  (掲載日:2015年12月14日)
日本経済研究センター 大阪支所
講師
田中修・日中産学官交流機構特別研究員
要旨
構造転換めざす「新常態」の中国― 中高速成長時代、都市・農村格差縮小に向けて
@中国の7−9月期の実質GDPは、前期比では7%を超え、景気が立ち直ってきている。投資は不調だが、雇用面では新規就業者増や失業率の年間目標も達成している。
A中国は「新常態」にあり、「中高速成長」、「質・効率の重視」、「構造調整」、「新たな成長スポット」の4つの転換期にある。
Bマクロ経済政策運営は、短期的な強い刺激措置ではなく、「区間コントロール」の基礎の上に「方向を定めたコントロール」を実施している。
C都市・農村格差縮小や一人っ子政策廃止への以降など、経済発展を重視し生産年齢人口減少対策を重視した政策に向かっている。
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<大阪>利上げ後の米国経済 ― 先を読み解く3つの論点
2015年10月26日(月) 開催  (掲載日:2015年11月10日)
日本経済研究センター 大阪支所
講師
太田智之・みずほ総合研究所調査本部経済調査部長
要旨
米利上げペースはきわめて緩慢―利上げ後の景気後退確率は9割、業種等で影響に差
@米国経済は国内外に不安要素を抱え、利上げ期待が後退している。9月雇用統計など冴えない指標が相次いだが、経済正常化に向けた歩みは着実に進展しており利上げの条件は整いつつある。
A中国株下落など金融面を通じた影響には引き続き注意が必要だが、中国経済減速の米国への実態面での影響は限定的だ。
B懸念材料は残るが、FRBは早晩利上げを行うだろう。利上げ後に留意すべき点は、1)利上げペースがきわめて緩慢と見込まれること、2)利上げは景気後退の呼び水になること、そして3)利上げの影響は地域や産業等によって差があることの3つである。
C米国で顕著となっている政治の機能不全は、期待成長率低下の副産物という側面がある。大統領選後も改善は期待薄だ。同時に実施される上院選次第で状況が悪化するリスクもあるだろう。
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学習する次世代型コンピューター、ワトソン―経済社会はどう変わるか
2015年10月22日(木) 開催  (掲載日:2015年11月9日)
日本経済研究センター
講師
吉崎敏文・日本アイ・ビー・エム執行役員ワトソン事業部長
要旨
Watson(ワトソン)は企業の右腕になる―技術でデータから価値を引き出せ
@Watsonの特徴は「理解」、「学習」、「根拠の提示」であり、今後コンピューター市場において新たなステージをつくるIT技術である。Watsonは、膨大なデータを取込み、検索とマッチングにより回答を導き出す。また学習を繰り返すことで情報は重み付けされ、回答の信頼性、正確さを高める。Watsonは成長するコンピューターである。
A今後はデータをどう活用するかが企業の競争優位となってくる。メールや自然言語などの多くの非構造化データは、有効活用すれば大きな差別化要因となる。Watsonの技術を上手く組み合わせれば、新たな時代を勝ち抜くことができるだろう。
Bデータは利用の目的と手段が明確になってこそ活きるものであり、Watsonに適した分野を特定し育成することが重要。最終的な判断は人間が行うのであり、人が技術を活かすのである。
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金正恩政権と朝鮮半島情勢の行方
2015年10月16日(金) 開催  (掲載日:2015年10月30日)
日本経済研究センター
講師
康仁徳・北韓大学院大学校碩座教授
要旨
統制力を強める金正恩政権、経済が課題―将来見据え、韓国は圧力と交流
@北朝鮮で10月10日、労働党70年記念行事が行われた。金正恩第1書記が演説で「人民」という言葉を25分で97回使用した点に、課題である統制力と求心力の強化を図る気持ちが表れている。最高指導者への就任から4年。張成沢・元国防委員会副委員長らの粛清や軍への圧力などで自身の絶対化を進めている。
A食料、エネルギー問題は依然として深刻で、外貨調達も課題。財政難を抱える中、インフラ整備が遅れている。
B韓国は中国とともに北朝鮮へ圧力をかける必要がある。イデオロギーまで中国と理解しあっているということではなく、安全保障上の利害、経済上の利害を鑑みた結果である。
C北朝鮮の現代体制が崩壊する際、ハードランディングとソフトランディングの両シナリオが考えられるが、統一に備えた一歩としてまずは人的交流をしていくことが必要である。
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株価バブル崩壊、どうなる中国金融
2015年10月15日(木) 開催  (掲載日:2015年10月28日)
日本経済研究センター
講師
関根栄一・野村資本市場研究所北京代表処首席代表
要旨
株価暴落でも進む規制緩和―株式・為替市場とも「改革の本丸」
@中国のバブル崩壊は、金融リテラシーの低い個人投資家が中心の株式市場で歪みが生じていたことが原因。プロの投資家は暴落前に信用取引を手じまいしていたことや、国内の二大株式市場で外国人投資家比率が極めて低水準だったことが、株安に拍車をかけた。株式投資ブームを煽るような中国当局の政策にも問題があった。
A株価暴落後に当局が打ち出した対策には、株価維持や実体経済の浮揚よりも、金融システミックリスクが顕在化するのを避ける狙いがあった。信用取引を行う個人投資家と証券会社双方の資金繰りに最大限配慮し、中国発の金融危機を防ぐことにはひとまず成功した。今後は株価維持政策(PKO)など緊急避難的政策の出口局面に留意を要する。
B株式の発行、流通市場の機能を早期に回復させることが不可欠で、市場に厚みを与える大胆な規制緩和が待たれる。人民元レートも、元の国際化が進むなかで市場実勢に合わせる形で自由化が進むだろう。人民元を取り込む点で、東京市場は他国に後れを取っている。早期キャッチアップが必要である。
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資料
セミナー資料

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安倍政権・アベノミクスと日本経済―サマーダボス会議報告
2015年10月13日(火) 開催  (掲載日:2015年10月27日)
日本経済研究センター
講師
竹中平蔵・日本経済研究センター研究顧問
要旨
新三本の矢で成長戦略の一層の強化を―日本経済の羅針盤を持て
@ダボス会議で挙げられた3つのリスク要因、中東情勢、新興国の景気減退、米国の利上げ、そのすべてのリスクが顕在化し、楽観的な世界経済の成長シナリオを修正していかなければならない局面になっている。
A新三本の矢は言うならば三本の矢の延長線だ。今後の決意を発表したという意味では、アベノミクスは第二フェーズに入ったといえる。その実現に重要な役割を果たすのは経済改革担当の副大臣だ。改革志向の若手の起用が行われていることを期待したい。
Bさらなる経済成長の実現には、安倍首相の「ダボス公約」である法人税引下げ、岩盤規制の緩和の実現が課題となる。合わせて、アベノミクスの成果をさらに発展させていくことも必須となる。
C日本にとって大事なのは自らの羅針盤を持つことである。志を高く前向きに、経済を良くしていく政策を行っていかなければならない。
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AEPR特別セミナー
インドネシア経済の展望―金融緩和と資源ブームを経て
2015年10月9日(金) 開催  (掲載日:2015年10月14日)
日本経済研究センター
講師
ムハマド・チャティブ・バスリ・前インドネシア財務相
要旨
減速経済に米利上げと中国リスク―FDI誘導が重要、中長期的に人・インフラを
@世界経済は不確実性を増しており、米国の利上げ、中国の景気減速、石油価格下落など4つのリスク要因がインドネシア経済に影響を及ぼし得る。
A足元4%台後半の実質成長を維持しているが、経済は減速している。輸出、消費、投資とも伸びていない。
B中銀による金融緩和の余地はなく財政支出の拡大も難しい情勢で、目先の政策手段は限られている。海外からの直接投資(FDI)導入をテコに輸出振興や経常収支改善を図る政策は、対応として重要だ。
C中長期的には資源に依存しない知識集約型の経済・社会を目指す必要があり、そのために人的資源の育成、インフラの整備、ガバナンスの強化が課題になる。人材育成の基金創設など対策を進めている。
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資料
セミナー資料

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<大阪>地方創生の総合戦略 ― 稼ぐ力と雇用創出
2015年10月8日(木) 開催  (掲載日:2015年10月20日)
日本経済研究センター 大阪支所
講師
中村良平・岡山大学大学院・経済学部教授
要旨
域外需要呼び込む産業伸ばせ―産業基盤モデル活用し客観的な分析を
@地方版総合戦略で一番目新しいのは重要達成度指標(KPI)の策定だ。国は自治体に対し、KPIを産業連関分析で策定することを求めている。自治体がまちを分析し、自前でKPIを作り県や国と対等に議論できることが地方創生の上で重要だ。
A地方創生の基本的なエリアである市町村は非常に解放的である。そのため、生産・分配・支出が一致するという三面等価の原則にズレが生じる。まちの中でモノやサービスを生産しても、所得が域外へ流出していることがある。また、まちの中で投資先がない資金が都市へ流出し、卸売機能は都市に集中している。
Bデータをみる際は、因果関係のある規範的なモデルが必要だ。経済基盤モデルでは、産業を域外の需要を呼び込む基盤産業と、基盤産業に派生して需要を生む非基盤産業とに分けるが、地方創生には、基盤産業を伸ばすことが重要だ。
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セミナー資料

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ESPフォーキャスト調査特別セミナー
物価と個人消費の行方を考える
2015年9月30日(水) 開催  (掲載日:2015年10月15日)
日本経済研究センター
講師
肥後雅博・日本銀行調査統計局参事役
斎藤太郎・ニッセイ基礎研究所経済研究部経済調査室長
岩下真理・SMBCフレンド証券チーフマーケットエコノミスト
司会)小峰隆夫・日本経済研究センター研究顧問、法政大学教授
要旨
価格設定に「強気」の兆し、2%上昇には時間も―遅れる消費回復、カギは実質所得の伸び
@消費者物価の基調は幅広い財・サービスで上昇に転じたようだ。円安に伴う輸入価格の上昇を転嫁する動きや、労働需給逼迫に伴う賃金引き上げが背景にある。小売の価格設定には特売の見直しを含めた「強気」の姿勢ものぞく。物価の下押し要因であるエネルギー価格の下落が落ち着けば、ペースは遅いながらも着実な物価上昇が想定される。
A増税後の消費の回復が大きく遅れている理由は、実質所得が期待したほど伸びていないことだ。賃上げの恩恵がない年金受給世帯が増え、しかも、給付額が削減されたことも響いている。消費の今度の焦点は賃金上昇がどの程度、広がっていくかにあるだろう。
B消費統計は大方の予測以上に下振れを続けている。その一因として、家計調査のサンプルが低所得者層に偏っている影響が考えられる。他の統計も含め、サンプルの偏りの見直しや、いわゆる「品質調整」などへの適切な対応が望まれる。
C日銀の2%という物価上昇目標は、原油価格下落の影響もあり、達成は困難との見方が多い。条件次第で追加緩和が予想されるが、効果は限定的であり、2%という目標の達成は中長期の課題となる可能性が大きい。
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資料
肥後氏セミナー資料
斎藤氏セミナー資料
岩下氏セミナー資料

人手不足を乗り切る雇用・生産性革新―付加価値力強化のための事業・人材戦略
2015年9月24日(木) 開催  (掲載日:2015年10月7日)
日本経済研究センター
講師
山田久・日本総合研究所調査部長・チーフエコノミスト
要旨
人手不足は付加価値力向上で解消―就社型から就職・就社併用型へ転換を
@現在の労働力不足は、「生産性の低迷」および「雇用のミスマッチ」が主因であり、人材の有効活用がなされていないことの反映だ。付加価値ベースの生産性をビジネスモデルの転換でリーマン・ショック前のトレンドに戻すことができれば、人手不足の多くは解消、1〜1.5%の生産性向上で2020年度時点で解消できる。日本企業の付加価値生産性は低く、プライシング戦略を始めとする企業行動を見直す必要がある。
A付加価値生産性の向上には、従来日本でとられてきた「就社型」雇用システムから、「就職・就社併用型」への転換が必要である。それを実現するためには、特定職業内での長期継続就労が可能となる社会的な仕組みづくりが重要となる。異なる就業形態間での相互転換が容易になることで、個人がライフステージに応じて働き方ポートフォリオを組めるような「働き方改革」が実現することを期待している。
B付加価値創造経営には、人材投資を通じて企業価値を向上させることや、賃上げを企業構造改革のツールと捉え、主体的に取り組むことが重要である。
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<大阪>関西の有望産業は―設備投資計画調査からの展望
2015年9月14日(月) 開催  (掲載日:2015年9月25日)
日本経済研究センター 大阪支所
講師
大来哲郎・日本政策投資銀行関西支店次長兼企画調査課長
上野剛志・ニッセイ基礎研究所経済研究部シニアエコノミスト
要旨
観光、ヘルスケア事業への投資拡大に期待―中長期の展望持てる経済政策、カギに
@関西の日本政策投資銀行「2015年度設備投資計画」は前年実績比15.0%増(製造業同39.7%増、非製造業同4.1%増)となった。化学、電気機械、一般機械を中心に積極的な投資が見込まれ、企業は海外拠点への投資意欲も高い。関西の成長戦略には、豊富な観光資源を背景にしたインバウンド・国内観光と高齢化に伴うヘルスケア分野への投資拡大が期待される。
A足元の設備投資は計画ほど強くはないが、企業の収益は過去最高で余力はある。計画から投資の実行に移すためには、企業にとって中長期の期待がもてるような経済政策がカギとなる。中国発世界同時株安や内需の弱さは、設備投資にとって下振れリスクとなる。
B東京には魅力があり、人が集積するメリットもあるが、関西の成長のためには、関西の強みを活かしつつ、若者が関西にとどまるための受け皿をつくる産業政策が重要である。
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資料
セミナー資料(大来氏)
セミナー資料(上野氏)

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欧州の亀裂―統合の進展と相互不信
2015年9月4日(金) 開催  (掲載日:2015年9月24日)
日本経済研究センター
講師
遠藤乾・北海道大学公共政策大学院教授
要旨
EU崩壊には至らず、底流に一定の連帯感―難民と原理主義の挑戦にはちぐはぐ感も
@ギリシャ危機では欧州連合(EU)が崩壊するのではとの懸念が広まったが、悲観的すぎる。同国に対して厳しい態度をとるドイツだが、実際にはユーロ圏に巨額の信用や保証金を積み上げており、ユーロ圏の連帯感は過小評価されている。域外国や世界市場に対して団結して対峙できる恩恵も捨てがたい。
A反EU政党が各国で支持を伸ばしているものの、中身はバラバラで、主要国の議会で多数派を占めるとは考えにくい。大国ドイツの政党政治は極めて安定しており、EUを支える要因となる。
Bただし、EUには「皆で決めたことは皆で守る」という民主的な正統性がない。危機になり支援をすると、自らと支援すべき相手との差異が気になり不信が増幅する。また、民主主義と財政は深く結びついているため、財政同盟も難しい。
C現在、EUが直面する難問は、難民問題とイスラム原理主義とのイデオロギー対立である。欧州統合の根幹には、ヒト・モノ・カネの自由移動原則があり、域外からの大量移民に対して脆弱である。
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セミナー資料

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日本財政を巡る課題―基礎的財政収支黒字化に何が必要か
2015年9月2日(水) 開催  (掲載日:2015年9月8日)
日本経済研究センター
講師
小黒一正・法政大学経済学部教授
要旨
財政問題のピークは10年後―財政収支改善に奇策なし
@これまでの世界史を振り返ると、財政問題も多くの国の栄枯盛衰に影響を与えてきた。現在の日本の債務残高のGDP比は戦前を超え、過去最高の水準を更新している。人口減少時代を迎え、経済成長に頼れなくなるなか、厳しい財政状況を乗り越えるべく、新しい仕組みを構築していく必要があるが、財政破綻時の対応策も検討しなければならない時期に差し掛かっている。
A政府が目標とする2020年度の基礎的財政収支の黒字化だが、経済再生ケースでさえ試算結果は▲1.0%とその目標達成は難しい。年金、医療、介護を中心とする社会保障関連費用の増大に歯止めがかからない状況が続けば、黒字化の目途は立たない。
B財政再建に奇策はなく、歳出の削減と増税による歳入拡大を地道におこなうことが重要となる。医療・介護分野においては、ガバナンス構造の変革と民間保険の更なる活用が求められる。
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セミナー資料

集中セミナー:逆風下の地方創生 第1回
2015年8月24日(月) 開催  (掲載日:2015年10月1日)
日本経済研究センター
講師
小泉進次郎・内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官
山崎史郎・内閣官房まち・ひと・しごと創生本部地方創生総括官
平井伸治・鳥取県知事
樋渡啓祐・地域経済活性化支援機構社外取締役(前武雄市長)
小峰隆夫・日本経済研究センター研究顧問、法政大学教授
司会)原孝二・日本経済新聞社東京編集局地方部担当部長
要旨
地方創生、意欲と行動で成否分かれる―自治体は息の長い取り組みが必要
<基調講演>
@「地方創生」のうち、政府が指定した9つの国家戦略特区では、自治体が独自の取り組みや近未来技術の開発を進めている。農業委員会の権限移譲や自動走行車の実証実験など、さまざまな試みをする自治体への支援が必要だ。特区で後押ししている人工知能は、不足する労働力を補う重要な技術だ。
A地域経済を振興するため、行政は地域の企業情報をもっと把握すべきだ。地域経済システム(RESAS=リーサス)は地方創生の重要なツールになる。すべての自治体が、わがまちで活動する企業情報を網羅的に把握できるため、効果的な産業誘致策が可能になる。9月中旬には農業や外国人観光客のビッグデータも把握できる機能を追加し、自治体の産業活性化を支援する。
B自治体独自の取り組みが問われる時代だ。地方創生は、均衡ある国土の発展という考え方ではなく、自治体の間で意欲や行動の違いによって差が生まれるという考え方だ。政府は本当に頑張った自治体が報われるように支援していく。

<パネル討論>
@少子化対策は国が主導で進めるべきだ。日本全体での取り組みがあったうえで、地方自治体が子育て環境の充実や不妊治療対策など独自の政策を加えていくのが望ましい。
A地方創生は5年単位の息の長い取り組みが必要だ。産官学だけでなく、金労言(金融・労働・言論界)など幅広く民間の力を結集して進めなければならない。
B自治体が予算の獲得ばかり意識すると、霞が関の査定を気にして似通った政策ばかりが生まれがちだ。国が裁量を与えれば、やる気のある自治体から新しいアイデアが生まれる余地はある。地域の将来を真剣に考える住民が増え続けることこそ、地方創生の本当の目的だ。
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資料
山崎氏資料
平井氏資料
樋渡氏資料
小峰資料

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カンボジア経済の新展開―「タイ・プラスワン」で高まる存在感
2015年8月5日(水) 開催  (掲載日:2015年8月25日)
日本経済研究センター
講師
道法清隆・日本貿易振興機構総務部人事課課長代理(前プノンペン所長)
要旨
拡がるメコン圏生産網―消費市場に新たなチャンスも
@カンボジアはASEAN諸国の中で投資先として魅力的な国である。外資系企業に対する規制がほぼなく、経済特別区が数多く設けられており、投資業種と投資金額の条件を満たせば、一定期間の法人税免税など投資優遇策を享受できる。南部経済回廊とインフラ整備で生産ネットワークが拡がっており、タイ・プラスワン、つまりタイなど既存の工場を補完する新たな生産拠点として注目されている。
A高い経済成長率を維持しており若者の消費が活発であるため、市場としても魅力的だ。日系企業は衣料品・電子部品・自動車部品メーカー等の製造業のほか、飲食・小売業など非製造業の進出が急速に増えている。
B投資環境で大きな課題は従業員の賃金上昇だ。インフラ面では電力事情にも注意する必要がある。税務・労務などの取り締まりも厳しくなっており、リスク対策が必要である。
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水素社会実現への展望
2015年7月28日(火) 開催  (掲載日:2015年8月4日)
日本経済研究センター
講師
塩沢文朗・住友化学理事、気候変動対応推進室部長
要旨
水素で「再エネ」大量輸送へ―発電分野での水素利用に期待
@日本が直面しているエネルギー・環境制約を克服していくためには、今後、再生可能エネルギーの大量導入を図ることが必要となる。しかし、日本はその置かれている地理的環境から国内の再エネは質的にも量的にも恵まれていない。海外の安価な再エネを大量に輸送する手段として水素が重要となる。
A化石燃料の消費は、発電分野が全体の40%を占める一方で、家庭が5%、旅客自動車が10%である。2030年までにエネファーム、燃料電池自動車が政府の掲げる目標どおり普及したとしても、CO_2排出量は1%弱しか削減できない。また、化石燃料を原料とする改質水素を利用するだけでは、水素の本来の価値は発揮されない。海外の再エネ由来の水素エネルギーを輸送し、国内の発電分野や産業分野に導入することで「水素社会」に向かうことが必要だ。
B大量の水素を長距離輸送することは難しい。液化水素、MCH、アンモニアなど、水素エネルギーの輸送、貯蔵を容易にする「エネルギーキャリア」の研究が進んでいる。
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<大阪>異次元緩和の行方と世界の金融・経済動向
2015年7月27日(月) 開催  (掲載日:2015年9月7日)
日本経済研究センター大阪支所
講師
加藤出・東短リサーチ社長チーフエコノミスト
要旨
楽観できないインフレ2%目標、米利上げも左右―政府債務拡大への危機感が必要
@日銀の量的緩和政策によるマネタリーベース増加が直接インフレ率を上昇させるわけではない。帰属家賃を含む日本のコアCPIが日銀の目標である2%を達成するのは容易ではない。
A政府債務残高(対名目GDP比)は240%を越え世界一だが、日本国内の危機感は乏しい。社会保障の強制的な大幅削減など“広義のデフォルト”の可能性が高まる。将来世代に負担を押し付ける「財政的幼児虐待」を和らげるためにも財政健全化が必要だ。
B米国は年内に利上げに踏み切ると想定する。その後の道筋は、経済指標次第であり、特に賃金・雇用関連統計の動向が注目される。
C欧州ではマイナス金利を実施しているが弊害も多い。日本での導入は回避すべきである。日銀は2017年度の実質GDPを0.2%と低く予想しており、出口政策への着手はまだ先になる。
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戦後70年―アジア新時代の日本外交
2015年7月23日(木) 開催  (掲載日:2015年7月24日)
日本経済研究センター
講師
白石隆・政策研究大学院大学学長
要旨
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どうなる利上げ後の米国経済
2015年7月14日(火) 開催  (掲載日:2015年7月24日)
日本経済研究センター
講師
高橋祥夫・バークレイズ証券チーフ外債ストラテジスト
要旨
新興国巻き込むリスク小さく―市場は段階的な出口戦略を期待
@6月のFOMCの経済予測を契機に、市場では米連邦準備理事会(FRB)の利上げ開始時期の後ずれ観測が強まっている。ただし、経済指標の数字次第では9月利上げの可能性も十分にある。
AFRBの出口戦略については、足元の経済指標を慎重に判断しながら、利上げに続いて満期到来証券への再投資停止という形で段階的にゆっくりと進められるという市場の期待が形成されている。米国の長期金利の上昇は限定的なものにとどまる公算が大きい。ドル相場は緩やかな上昇傾向が続くだろう。
B 新興国市場への投資資金は2013年に量的金融緩和の縮小観測で引き揚げられ、完全に戻りきっていない。中国株式市場も政府の施策で落ち着きを取り戻すとみられ、FRBの利上げが新興国全体を巻き込む深刻な危機を引き起こすリスクは小さい。
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第4次産業革命―デジタル化が迫るモノづくりの変革
2015年7月7日(火) 開催  (掲載日:2015年7月13日)
日本経済研究センター
講師
西岡靖之・法政大学デザイン工学部教授、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)発起人
要旨
モノとサービスの融合遅れる日本―企業連携で標準獲得を急げ
@製造業とサービス業の境界が曖昧になる「第4次産業革命」。企業は物理的な製品の販売ではなく、インターネットに接続した製品の利用や付随するサービスから収益を得るようになる。それを可能にするのが、あらゆるモノをインターネットにつなぐIoTだ。産業構造は激変し、データ蓄積の標準となるプラットフォームを制した企業が有利になるだろう。
Aドイツは膨大なデータを保有する工場を起点に、IoTを実現しようと国をあげて取り組んでいる。米国では製造業のサービス化に強い企業が多く、民間主導で連合体を形成している。一方、日本は個別の業界・企業ごとの動きにとどまっている。
B危機感から日本の産業界は緩やかな標準化形成に動き出した。日本の強みである現場のヒトの力などを生かして、データだけでなく、現場のノウハウや価値同士がつながる進化した製造業を目指す。
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<大阪>≪日経センター「大都市研究」報告≫
大阪は活力を保てるか―東京集中を問い直す
2015年7月7日(火) 開催  (掲載日:2015年7月21日)
日本経済研究センター 大阪支所
講師
小峰隆夫・日本経済研究センター研究顧問、法政大学教授
中川雅之・日本大学経済学部教授
榮野正夫・大阪府政策企画部企画室長
要旨
大阪は東京と異なる存在感を−地方創生と少子化、議論分けよ
@最近の地方創生論は、出生率の低い東京への集中が少子化を加速するとの見立ての下、人口維持の手段として地方分散を位置付けているのが特徴だ。しかし、(1)サービス化や情報化などを背景に都市集積の利益が高まっている、(2)大都市は結婚の相手を見つける場として機能している――など、都市集中には利点もある。地方創生と人口減対策は分けて議論すべきだ。
A都市人口をみると、札幌、福岡、仙台などブロック中心都市など政令市クラスの都市群が成長しており、2極から多極へと向かっている。今後、大阪圏は東京圏に比べ人口減少が進む。大阪では都市縮小を見込み、従来の延長線上のインフラ更新を見直すべきだ。
B大阪圏は、特区活用による先端医療などの次世代産業や、大阪・京都・神戸など個性的な都市が併せ持つ歴史・文化・知識集積などの強みを生かし、東京とは異なる存在感を発揮すべきだ。
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