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日本経済研究センター Japan Center Economic Research
最終更新日:2009年7月13日
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読むゼミ

経済同友会・日本経済研究センター共催シンポジウム
 当面の危機克服と中長期の成長戦略を問う
 「100年に一度の危機を100年に一度のチャンスに」(2009年5月14日開催)
(パネリスト)
桜井正光・経済同友会代表幹事
高木剛・連合会長
小峰隆夫・日本経済研究センター主任研究員
新井淳一・日本経済研究センター会長(司会・コーディネーター)

潜在成長率の引き上げが急務
輸出と内需、双発エンジンに/市場の「健全性」確立を

右から小峰隆夫氏、高木剛氏、桜井正光氏、新井淳一氏 【概要】 日本経済研究センターは今年度から取り組む政策提言プロジェクトの一環として、経済 同友会と共同で5月14日、「100年に一度の危機を100年に一度のチャンスに」と題し たシンポジウムを開催した。昨年9月に起きた米国の金融危機に端を発した世界同時不況 を克服し、日本が抱えるさまざまな構造問題を解決するには潜在成長率(成長力)の引き 上げが欠かせないとの認識で一致した。また各パネラーは力点の置き方は異にしながらも、 輸出だけでなく内需の拡大につながるような規制や企業の行動原理の改革が求められると指摘した。

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 司会 景気は底を打っても横ばい期間が長く続くL字型になると予測するエコノミストが多いが、現状をどうみるか。

 小峰 2008年10−12月期、09年1−3月期と厳しいマイナス成長が続き、戦後最悪と言える状況だった。米国の金融危機が実体経済に大きな影響を及ぼし、輸出の底が抜 けたわけだ。実質国内総生産(GDP)は危機の震源地・米国よりも大きなマイナスになっている。鉱工業生産は米国の大恐慌時よりも落ち込みが厳しい(図1)。まさ に景気は底割れした。

図1 日本の生産低迷は、米国の大恐慌時を上回る

 ただ現在は鉱工業生産指数や消費マインド、株価の動きなどからみてL字の縦棒の 部分に相当する急激な落ち込みは止まったようだ。08年度後半の落ち込みによって実質GDPのレベルが下が ってしまっている(成長率のゲタが低い)。みかけ上の経済成長率は09年度が最も悪いが、最悪期は08年度後半だった。

 最悪期を脱しても、レベルが低いということは大きな需給ギャップが残り続けるということだ。日銀短観などの調 査をみるとバブル崩壊後と同様に雇用や設備に急速な過剰感が出ている。これが賃下げ、雇用調整を通じて個人消費の減退につ ながると、景気が「第2次底割れ」ということになってしまう。

景気回復は2010年以降

 桜井 金融危機による日本経済の急激な落ち込みは、外需に日本経済が依存しすぎていることを示している。そこを危機が直 撃した。設備・雇用の調整、消費の減退というスパイラルが輸出型企業以外にも影響を及ぼし始めている状況だ。この実体経済 への悪影響は、今後大きくなっていく可能性が高い。経済同友会のアンケート調査では09年度上期は景気後退が続くと見る経営 者が約85%だ。09年中は雇用環境も設備投資動向も悪い。

 景気回復は10年に入ってからだろう。10年上期(1−6月期)とみる経営者が約4割、下期との見方が約3割になっている。 回復の原動力は、欧米の景気回復と金融市場の安定をあげる声が5割、4割を占めており、ここに日本の外需依存体質が表れている。

失業率6%の恐れ

 高木 金融危機に端を発する世界同時不況の日本への悪影響がこれほど際立って大 きいのは、外需依存体質だけでは説明できない部分がある。ここ10年の経済財政運営、 企業行動(家計への分配を下げ続けた)では内需は盛り上がりようがない。内需が景 気を下支えする下地さえ失われている。すでに非正規雇用は全体の4割に近づきつつ ある。労務費を下げたため、本来ならば年間300兆円程度の家計への収入があるはず なのが、270兆円程度にとどまっている。この30兆円は偶然かもしれないが、現在の 需給ギャップにだいたい見合う。足元で企業は(外需減以上に)在庫を減らし、派遣 切りに象徴される雇用調整を急速に進めている。3月の完全失業率は4.8%だったが、 今後上昇が続いて過去最悪の5.5%を超え、6%に達する恐れもある。雇用調整助成金 の申請者数は、3月だけでも約200万人おり、失業率上昇をしのいでいる。いつまで こういう状況を続けることが可能なのか。

 現在の経営者は、経営不調にはドラスティックに対応するのが当たり前と考えがちだ。漢方薬で根本からじっくり治すのでは なく、いきなりメスを入れようとする。(雇用の安定・確保、労使協議の原則、公正な配分という) 生産性3原則は忘れられている。雇用は経済に遅行性があるだけに今後、景気の下振れリスクにな りかねないと心配している。
図2 景気対策の効果(実質GDPを1%押し上げ)



財政規律の再構築が急務

 司会 景気対策の評価、功罪は。

 小峰 雇用対策や環境配慮型の車や家電の普及を促進する内容になっており、公共 事業に偏った内容になっていない点は評価できる。政府はGDPを2%程度押し上げるというが、当センターの試算では1%と みている。効果はそれなりにある。ただ巨額な支出によって、好転してきた財政赤字 がほとんど昔の状態に戻ってしまう。

 桜井 我々の予想以上の規模(約14兆円) の補正予算になっている。一層の底抜けを防ぎ、生活防衛、明日の成長の基盤をつく ることは大切だ。しかし中身を吟味すると課題もみえる。09年度の国債発行は44兆円 にもなっており、最終的には、税収よりも国債発行の方が多くなるだろう。売上高よ り借金が多い企業なら市場から退出を迫られる。将来、国の信頼喪失→金融不安→実 体経済への悪影響にならないか。財政規律を確立するためにも税制の抜本改正の基礎 となる「中期プログラム」を早急に見直してもらいたい。

 使い方にも疑問は残る。基金関係の予算 項目が46もあり、4.3兆円にもなる。官僚の裁量で使える資金が増えたようなもの。 消費拡大だけでなく、将来の成長戦略を見すえたインフラ整備、技術革新への投資と いう「賢い」支出になっているのだろうか。

 高木 昨年からの対策で「家計に塩を送 る」ものはほとんどない。強いて言えば(2兆円の)定額給付金ぐらいだ。しかし 夏のボーナスは官民合わせて2.5兆円、冬も同程度は昨年より減る見込み。所定外賃 金なども含め、09年度の家計の可処分所得は10兆円程度減少するとみている。1日も 早く効果は出てほしいが、回復は難しい。

潜在成長率1%、課題解決できず

 司会 我々の置かれている状況は、短期的な危機克服と中長期の構造問題を解決す るための成長戦略を同時にこなす必要がある。そのカギは。

 桜井正光・経済同友会代表幹事桜井 日本の潜在成長率(成長力)は1%程度といわれるが、これで将来のニー ズに対応できるのか。日本は他の先進国に先駆けて少子高齢化という問題に直面す る。地球規模では温暖化防止という課題、ニーズがある。同時にエネルギー、資源、 食料問題も考えていかなければならない。こうした課題、ニーズに対応するには潜在 成長率を引き上げる必要がある。  しかし日本国内には例えば、温暖化問題への対応に ちゅうちょする向きが根強い。個人的には信じられないことだ。この問題への対応に よって将来の雇用創出や需要喚起ができ、新たな産業や企業の誕生にも結びつく。

 新分野にチャレンジする企業や産業を育成するには、「健全な」市場経済が欠かせ ない。市場を通じて新産業の方向性などがみえてくる。これを否定すると中長期的な 成長など実現しない。健全な市場に基づく構造改革が必要だ。

 高木 中長期的に潜在成長率が1%しかないというのは、企業に例えると将来に向 けた新規事業や目標がほとんどない状態だ。外需が落ち込んだときにほかの柱が何 もないことを象徴している。この状況を変えるには内需中心の経済社会を築く必要が ある。 高木剛・連合会長 格差社会、問題といわれる正規・非正規、男女、若者・中高年間の格差問題を 解決する必要がある。そのカギは「公正とは何ぞや」ということだろう。不公正にな っている部分を見直す必要があるというわけだ。同一価値労働、同一賃金は当たり前 だと思うが、なぜか正規社員がやれば100の報酬で、パートタイム社員がやれば50と なっている。誰が考えてもおかしい。

 桜井さんは健全な市場というが、「健全」 の中身が問題だ。労働市場という言葉もあるが、生身の人間の生活がかかった雇用の 問題で市場という概念が成り立っているのか、疑問を持っている。

小峰隆夫・日本経済研究センター主任研究員 小峰 外需依存という言葉はちょっと不正確だ。外需は輸出−輸入なので、輸出が 増えても輸入が同じように増えれば、外需依存にはならない。02−07年の景気回復は 輸出依存で、内需の拡大につながらなかった。非正規依存が進むなどして、 労働分配率が上がらず内需拡大の条件は整っていなかった。

 これからの内需というと医療や介護、環境分野が有力といわれるが、なぜ需要が顕 在化し新たな産業として発展しないのか。簡単に言うと公的な関与が強く、良いサー ビスを提供したらもうかる仕組みになっていないからだ。多様なサービス、質の良い サービスの提供を促すように規制を改革しなくてはいけない。

 一方、輸出産業は、日本で最も生産性の 高い分野なので軽視してはいけない。今後もどんどん伸ばすようにすべきだ。輸出も 内需も拡大するような構造改革が必要だ。

税制改革、格差是正では温度差

新井淳一・日本経済研究センター会長

 司会 今後、改革を進めるべき分野は。

 桜井 まずは社会保障制度だ。若者と高齢者の間で受益と負担のバランスが崩れて しまっている。(負担に比べて受益が少なくなる)若年層の年金の納付率は50%前後 まで落ちている。一方、年金の給付をまもなく受ける50歳代の納付率は7−8割に達している。

 納付率の現状と今後の人口減少を考慮すると、(社会保険料を中心とする)現在の 賦課方式では財政的にもたない。基礎年金部分は安定した税財源で負担するべきだと思う。 そのときには、消費税の引き上げということも課題になる。

 地方分権も急務だ。分権への改革は現在、完全に止まっている。官僚の権限が削られ るとして抵抗が強いことは確かだが、一方で「中央政府主導で財源をつけてもらい、 地方行政を進める方がいい」というのが本音の首長も結構いる。しかし政府は膨大な 財政赤字を抱えており、この仕組みが継続できるわけがない。今のままでは住民は地 方行政を応援したり支援したりすることはない。関心すらない。これでは地域住民の 要望にあった行政は進められない。

 「健全な市場」を巡って指摘があったが、顧客が商品やサービスの良しあしを正しく 判断できる十分な情報公開が保証されている必要がある。市場を監視することや偽っ た情報を流す組織や人への処罰が欠かせない。混乱が続く金融市場はそういう機能が 不十分だった。市場の名に値するものだったか、疑われると思う。国民の自己責任は 市場が健全でないと成り立たない。

 正規・非正規問題での高木氏の指摘には同意する。非正規労働を否定する必要はま ったくないと思うが、同一労働、同一賃金は当たり前で、賃金に格差があるとすれば、 正社員は非正規ができる仕事に就いてはならないということだ。

 高木 今のような税金の使われ方で消費税率引き上げなどの負担増にどれだけの国 民が納得するのか疑問だ。大抵のサラリーマンは怒るだろう。政府税制調査会に出席 していると経済界の委員は(国際競争力の観点から)法人税や相続税の引き下げばか り主張する。理解できる面もあるが、格差是正に必要な所得の再配分機能の議論は忘 れられている。日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国で後ろから数えた方が早いぐらい貧困率が高い国になっている。

 一方、最低賃金は時給700円で今の為替レートでも(格差が大きい)米国よりも低い水準にとどまっている。せめて1000円に できないのか。この水準で年間2000時間労働しても、200万円にしかならないし、手取り額はもっと低い。

 桜井 法人税は単に企業の問題ではない。競争力がなくなると(財・サービスを 売り込む)市場そのものを失ってしまう。雇用も維持できない。税引き後の純利益は、 明日の投資や厳しい局面に対する備えになる。また法人税の問題は海外から投資を呼び込むこととも関連している。

国際的な信頼獲得に改革欠かせず

 司会 そもそも21世紀の日本はどのような経済、社会を目指すべきなのか。そこがはっきりしないから、具体策の方向性がよくみえない。

 桜井 今後も輸出は日本を活性化し、大国としての役割を果たすための強力なエンジンだろう。これは大切にするべきだ。

 戦後、ゼロから出発した日本企業は、社会に対してどう役立つのか、哲学を持ってスタートした。今も基本は、21世紀のグロ ーバル社会で、いかに役に立てるかだと思う。一言でいうと「国際社会から信頼され る、貢献できる日本」だ。そういう観点から行財政改革や社会保障制度の再構築など を考えるべきだ。健全な市場を前提に競い合うなかで新産業が創出される社会にする べきだ。

 また地方分権を進め、地域住民が自らの責任で負担と受益の関係を決められるよう に改革する必要がある。自己責任で意思決定することが望ましい。そういうなかで中 長期の国民負担率も決まってくる。

 総選挙は目先の景気対策ではなく、それ ぞれの政党が将来目指すべき国のかたちを示し、そこへどのように持っていくか工程 表を作成して争ってもらいたい。

 高木 足元を見つめ直すことが必要だろう。(市場主義の本場)米国でも金融機関のあり方に厳しい目が向けられている。資 産査定(ストレステスト)はその表れで、足元を見つめ直す常識的な対応だろう。

 企業のあり方を日本でも再検討し、株主、従業員、顧客へのかかわりを見直すべきだ。 分配のあり方も生産性3原則をもう一度再確認すべきである。

 現在のような低い潜在成長率を引き上げるべく、投資領域を広くする努力も必要だ。 具体的には日本国内だけでなくアジアに対する投資や技術協力で関与を強めて明日の 成長の糧にすればいい。このときに国内外とも特定の富裕層だけでなく、幅広い階層 の生活レベルを引き上げられるように気を配ることが必要だ。

 小峰 国全体で21世紀にこうあるべきというビジョンが必ずしも統一される必要は ない。そんなことは少し気味が悪い。ただこれからの日本は確実に人口構造が変わる。 人口が減るだけでなく、高齢化が加わるので、働く人の割合が小さくなる。同じこと はやがてアジアでも起こる。日本はこの問題への対応のモデルを示すことができる。 必要なことは世代の自立だ。社会保障や環境などの問題・重荷を将来へ先送りせず、 自らの問題は自らが始末をつけるべきだ。現在の意思決定に将来世代は参加できない というのは民主主義の失敗だが、先送りを繰り返していると問題は一層大きくなる。

図3 2%成長でも財政は黒字化せず

 今回の金融危機は世界規模での貯蓄と投資の不均衡がもたらした。これを解消する 意味でも、国内の貯蓄を投資にまわす必要がある。そうすれば、経済成長率も向上す る。当センターで今後2%成長を実現するためのシミュレーションを実施した(図 3)。 毎年8%ずつ設備投資を増やしていく必要がある。ただ、2%成長を実現(消 費税率は10%に引き上げ)しても財政赤字は残るという厳しい結果だ。

キーワードは“賢い”

 司会 日本は年金や雇用、財政などさまざまな 問題を抱えているが、中長期の成長を確保しない と解決策は見出せない。企業や政府の役割をきちんと見直すとき だ。そのキーワードは「賢い」だろう。

 日本は何でもやるデパート国家から選択と集中を進めた専門店的な国に変わる必要がある。何を専門にするか。今日指摘があ った環境技術であったり、アジアとの関係であったりする。また専門店的になるため には構造改革も必要だ。

−さくらい まさみつ−
1966年早稲田大学第一理工学部卒、リコー入社。96年社長、2007年から会長、経済同友会代表幹事

−たかぎ つよし−
1967年東京大学法学部卒。旭化成工業、外務省などを経て96年ゼンセン同盟会長、2005年から現職

−こみね たかお−
1969年東京大学経済学部卒、経済企画庁(現内閣府)入庁。日本経済研究センターなど を経て99年経済企画庁調査局長。2003年から法政大学教授、06年から現職を兼務

−あらい じゅんいち−
1964年東京大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。日本経済研究センターを経て2003年日経副社長、08年から現職



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《政策提言プロジェクト始動》課題克服、各分野で対策探る

小林 辰男 主任研究員 「若手研究者による政策提言プロジェクト」担当 

【要旨】  今回、経済同友会と共同で開催したシンポジウムでは、日本経済が抱える中長期の課題の解決 に成長力(潜在成長力)の引き上げが不可欠であることを確認した。ただし、当センターのシミ ュレーションによると、最低ラインの2%程度の成長さえ、実現は厳しい。センターでは今年度、 3テーマについて「若手研究者による政策提言」に取り組んでいるが、それぞれ大胆な規制改革 や既存政策の見直しにより、成長力底上げに貢献することを目指す。

 シンポジウムで小峰隆夫主任研究員が当センターのシミュレーションを紹介したよ うに2011−20年度にかけて2%成長を達成するには、毎年8%増の民間設備投資が必 要になる。これは1980年代の平均的な投資水準。02−07年度の景気回復では04年度の 6.8%増が最大だったのとと比べるといかに高い水準の投資かわかる。少子高齢化で 働く人の減少傾向が続くため、8%増のうえに、生産性向上に結びつく情報化投資比 率を増やすことが条件になる。

 内需拡大というと、1400兆円ある個人金融資産を消費に回す政策の必要性が主張さ れることが多い。しかし長期的には少子高齢化で労働力不足に直面するため生産性の 向上が不可欠。投資の加速が必要になる。また02年以降の景気回復局面で企業は、キ ャッシュフロー内での慎重な投資を続け、国内最大の貯蓄超過主体になっている(図1)。
図1 企業は国内最大の貯蓄主体

これを企業本来の投資超過に転換することが成長力を高めることに直結する。

 当センターのシミュレーションでは、8%投資を実現するための促進策として、法人税率を10% 引き下げることや設備更新が活発化することを前提にして、ようやく11−20年度の実質GDP成長率 は平均2.4%、潜在成長率は1.5%に達する(図2)。
図2 中長期的な経済成長率の予測

民間設備投資は成長力押し上げのエンジンだが、 それだけでは2%成長すら難しいことをシミュレーションは示唆する。

 政策提言プロジェクトでは、個々のテーマにおける問題意識に加えてエンジンを補完し、効率的に機能させ るために、それぞれの分野での課題克服に当たることにした。

 まずは少子高齢化に歯止めをかけて労働力人口を増加させる試みだ。宇南山卓特別研究員(神戸大学准教授)は女性の就業支 援改革を通じて将来の働き手不足を解消することを検討している。現在の女性の就業率向上は、結婚よりもキャリアの中断によ る不利益を恐れて仕事を選択している結果とみており、少子化を招く原因という。子育て資金の援助である児童手当などは無駄 である可能性が高いと指摘する。子供を産んでもキャリアを中断させることなく働ける環境づくりが重要と分析している。

 五石敬路特別研究員(東京市政調査会主任研究員)は、ワーキングプア層に対する就労支援の改革に取り組んでいる。例えば 「入りにくく抜け出しにくい」とされる現在の生活保護制度を海外の就労支援制度を 参考に抜け出しやすい制度に改める。それによって働けるのに長期失業者となってい る人の増加を抑え、労働力としての活用を目指す。

 小池政就特別研究員(東京大学特任助教)は、再生が強く求められている農業問題に 取り組む。エネルギー問題と食料問題との対比も通じて農業、農政の抜本的な見直しを提言する。

 プロジェクトは今夏をめどに中間報告をまとめる。成果をマクロ経済モデルなどに取り込み、成長力をどの程度押し上げられ るかも試算する予定だ。
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