ブレグジットと日欧EPA ―国際的データルールの形成へ―

2019.02.12|

 本レポートでは、主に日本企業の視点から、ブレグジット、日欧EPA、国際的なデータルール作りという三つのテーマについて、互いに関連付けながら検討を進めたい。 ブレグジットの矛盾と企業の対応 ブレグジットの混迷が一段と深まっている。この問題の根底にあるのは、ブレグジット自体が抱える、以下のような根本的な矛盾だ(注1)。 (1)英国が移民などの移動の自由を制限しながら、単一市場との自由貿易を維持...

2019年・欧州最大のリスクは何か―イタリア・ブレグジット・米欧関係―

2019.01.11|

はじめに:2019年の欧州は危機か、停滞か  2019年の1年間、欧州ではどのようなリスクが表面化し対処がなされていくだろうか。  本レポートでは、この点について、前半では欧州域内、後半では欧州から見た対外的側面から検討したい。  先ず、欧州域内では、イタリア財政・ブレグジットといった年前半に意識されるリスクは一旦妥協・先送りされる。年後半にかけ、EU首脳の交代人事と主要国の選挙により、政策...

欧州は中国をどう見ているか―「一帯一路」、米中貿易戦争、Brexit―

2018.11.12|, , ,

 欧州は、中国の「一帯一路」構想による投資攻勢、米中貿易戦争の激化など、中国との関係をどう見ているだろうか。本レポートでは、この問いについて、欧州全体と独・英という主要国の二つのレベルで検討したい。  予め結論を述べると、欧州の中国に対する見方は、欧州の主要国別に見れば利害を異にして濃淡があるものの、欧州全体としての中国に対する見方は、高度な技術の移転への懸念などから、一段と厳しさを増している。...

英国、近づく「合意なきEU離脱」

2018.11.05|

▼ポイント▼ 英国の欧州連合(EU)離脱交渉が難航している。2019年3月末に英国のEU離脱が円滑に実施されるには、①12月までに英国政府とEUが離脱交渉で合意に至り、②合意内容を英国議会とEU議会が承認する必要がある。承認に至らない場合、「合意なき離脱」に陥り、経済に混乱が生じる恐れがある。 交渉を妨げているのは、①アイルランド国境問題の取り扱いと②将来の通商関係である。自由なモノの...

トルコと欧州:危機は波及するか-対米関係・難民流入・Brexitとの比較-

2018.09.10|

 トルコの危機的な状況が続いている。以下、トルコの国内情勢、欧州との密接な関係、世界の地政学的な状況の三点について検討した後、結論として今後の展開について述べることにしたい。 米国の経済制裁とトルコ国内の混乱  今回、危機の直接の引き金になったのは、8月初め、米国トランプ大統領がトルコに対し、米国人牧師の人質解放を求め、トルコ政府の重要閣僚に対する経済制裁を発表したことだ。NATOに加盟する同...

ブレグジット交渉の行方―「ジレンマ回避」のシナリオ-

2018.04.10|

3月末、英国ロンドンの著名な大学院大学の教授が来日し、国内の研究者・エコノミストとの間で意見を交換した。  そこで紹介された現地の動向を参考にしつつ、以下、「交渉の決裂という最悪の事態は避けられるかどうか」という観点から、ブレグジットの今後を考える上のポイントを検討したい。 ポイント①:アイルランド国境は設定できるか  先ず、英国・北アイルランドとアイルランド共和国との間の国境を...