第31回中期経済予測(2004−2015年度)
《第31回改訂》連鎖方式デフレーター公表に伴う改訂
2004年12月17日発表
12月8日に内閣府より連鎖方式によるGDP2次速報が公表されたことに伴い、第31回日本経済中期予測を改訂いたしました。
【マクロ編総括表】実質国内総支出(2000暦年連鎖価格)
第31回改訂 全文(2004.12.17)
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日本経済活性化への課題
「デフレ後」とグローバル化への対応
2004年12月1日発表
主査:河越正明
総括:二上 香織
■2015 年までの日本経済の展望
予測期間中の前提として、4 %程度の世界経済の成長、原油価格の28 ドル/バレルへの低下、10%程度の緩やかな円高を想定した。本年度に大きく悪化した交易条件は徐々に改善に向かう。また、財政再建に向け、消費税率が2008、2013 年度にそれぞれ3%、2%ポイントずつ引き上げられると想定した。こうした前提の下で、日本経済は2015 年度まで年平均2%程度の成長を実現するであろう。
予測期間前期(2004−2006 年度)には、足元の景気の減速は潜在成長率を下回るほどの「後退」にはならず、2006 年度には景気は持ち直す。これまでの景気拡大を受けて、多くの業種に支えられる裾野の広いものになっているため、景気の腰は強い。海外経済の回復が景気の下支えとなり、原油価格の反落による交易条件の改善は、企業収益を速やかに回復させよう。GDPギャップは縮小を続けるため、物価はマイナスからゼロに向かう。実質短期金利は低下しつづけ、景気を後押しするだろう。デフレ克服のため、金融緩和の維持と緩やかな財政引き締めというポリシー・ミックスの下で慎重な運営が求められる。消費は、2005 年度に前年度の高い伸びの反動から低迷するが、その結果同年度内の定率減税の縮減は見送られ、翌2006 年度から緩やかに回復する。定率減税は2006−07 年度に国・地方あわせて2兆円分だけ縮減するとした。
予測期間中期(2007−2010 年度)については、景気拡大によりプラスのGDPギャップが続くなかで、消費者物価(除く生鮮食品、消費税率引き上げの影響は除く)は2007 年度に上昇に転じ、以降2010 年度まで年平均1.4% の伸びとなる。日本銀行は2007 年度中に量的緩和を解除するが、2008 年度までは実質金利でみて比較的緩やかなスタンスを維持する。デフレ克服に伴うマインドの改善が、企業活動を積極化させるうえ、規制改革による需要創出効果( 7分野総額約10 兆円)が、非製造業を中心に顕在化しよう。資金需要の高まりを受け、また地価の反転もあって、貸出( 対名目GDP比)も2010 年度には増加に転じる。企業はより収益率を重視した経営を行うため、雇用者報酬の伸びは抑えられるが、財産所得の増加もあり、消費も年平均2% 程度増加する。輸入の伸びから外需の寄与はほぼゼロとなり、内需中心の景気拡大となる中で、本格的な財政再建への一歩として、2008年度に消費税率を8%へ引き上げることを想定している。
予測期間後期(2011−2015 年度)では、潜在成長率を若干上回る2% 弱の成長を遂げる。2011 年度が景気の谷となり、2012 年度から次の景気拡大局面に入ることから、2013 年度に消費税率が10%に引き上げられると想定した。この拡大は、消費や非製造業の設備投資にけん引された内需中心の拡大となろう。
家計については、足元2004 年度に消費性向が極めて高い水準に達している。これは、貯蓄をしたくてもできない世帯が多いことによって生じている可能性があり、予測期間中期に調整される。予測期間後期には、高齢化の影響で消費性向は再び上昇するが、退職前の世代は不十分な貯蓄を補うためになかなか労働市場から引退せず、消費性向の上昇は比較的緩やかである。このような消費性向の動きと財政赤字の縮小から、国全体の貯蓄超過はやや拡大し、経常収支黒字の対名目GDP比で概ね3%台後半で推移する。
財政再建は2015 年度において残された課題となる。2015 年度の一般政府の財政赤字は対名目GDP比3.4%、利払い費は4%超であり、財政硬直化が進む。増税、歳出削減、資産売却など2004 年度に比べ約6%分の財政再建策を想定するが、高齢化の進展から財政収支がネットで0.5%悪化し、5.4%の改善にとどまる。財政再建の目標をネットの政府債務を2015 年度水準で安定化させることとすると、約1.4%の基礎的財政収支の黒字が必要となろう。構造的な基礎的財政収支の黒字は0.2%であり、1%超の追加的な財政効率化(公共投資の更なる削減など)又は増税が必要となる。
■グローバル化と日本
本予測では、2007 年度にデフレを克服した後の日本経済の姿を描いたが、デフレを抜けたからといってすべての問題が自動的に解決するわけではない。潜在成長率の低迷(予測期間後期年平均1.7%)など残された課題を解決するための糸口を探すために、グローバル化の進展が日本経済に対応を迫る問題を、ヒト・モノ・カネ・技術の観点から検討した。
実質金利平価を統計的に検討すると、日本とアジア諸国間でも金融市場の統合が着実に進んでいる。こうした状況下で、企業は国際的に低い水準にある資本収益率を引き上げると想定した。生産性の伸びほど実質賃金は上昇せず、労働分配率は予測期間中に3%ポイント程度低下しよう。この結果、製造業の国際競争力はほぼ維持される。多数財リカードモデルにより、対中国及び対韓国の産業別比較優位を検討したが、予測期間中に大きな変化はない。競争激化から輸出価格が低下し、交易条件が悪化することはなさそうだ。
労働力の減少は主に2010 年代に潜在成長率を引き下げるように作用するが、これを外国人労働者受け入れで相殺するのはリスクが大きい。中国の所得水準の上昇とともに出稼ぎ労働者の潜在的供給圧力が高まる可能性に、注意が必要である。中国では2億人超の潜在失業者がいると推計する。熟練労働者の選択的な受け入れが現実的である。ただ、日本のような経営者も労働者も大差ない賃金構造の下で、高い能力をもつ外国人労働者を集めるのは困難であろう。
さらに、研究開発投資の効率性を向上させ、全要素生産性の改善につなげる必要がある。諸外国に比し極端に少ないサービス業で研究開発投資を増やせば、非製造業の生産性向上に有効であろう。日本の国際的な戦略技術提携件数の減少から推測される「内向き」志向を変えることが必要である。
日本は開放度(輸出入の和の対名目GDP比)が米国より低く、グローバル化の恩恵を享受する余地は大きい。グローバル化のメリットを享受できる企業内の組織設計が課題である。
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主要経済指標
実質GDP成長率の寄与度分解
産業別実質産出額の推移
[目次]
はじめに
1.第31回中期予測の問題意識
2.予測期間と主な前提条件
第1章 2015年までの日本経済の展望
1.概要
2.海外経済
3.企業部門
4.家計部門
5.公的部門
6.社会保障
7.雇用・賃金
8.輸出入と対外バランス
9.潜在成長率
10.物価
11.金融(金融政策、金利、地価、為替レート)
12.産業構造の変化
13.リスク要因
14.今後の課題
補論
第2章 グローバル化と日本
1.モノの流れ
2.カネの流れ
3.ヒトの流れ
4.技術の流れ
5.まとめと日本経済活性化に向けた含意
第1・2章の参考文献
【マクロ編 総括表】
1.主要経済指標
2.実質国内総支出(1995年価格)
3.名目国内総支出
4.デフレーター
5.実質国内総支出の寄与度と内需の動き
6.制度部門別貯蓄投資バランス
【マクロ編 参考表】
1.米国経済総括表
2.世界経済総括表
3.企業物価指数総括表
4.消費者物価指数総括表
5.国内金融総括表
6.労働力・賃金総括表
7.一般政府の所得支出勘定総括表
8.一般政府の部門別勘定総括表
9.社会保障総括表
10.家計(個人企業を含む)の所得支出勘定表
11.家計の形態別・目的別消費支出総括表(名目)
12.住宅着工戸数・地価総括表
13.新設設備投資額総括表
14.企業収益総括表
15.資金循環総括表
16.国際収支(IMFベース)・円レート
【産業編 総括表】
1.産業別実質産出額
2.産業別従業者数
3.産業別実質輸出額
4.産業別実質輸入額

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