第39回(中間報告)中期経済予測(2012-25年度)
産業地図の変容と日本の成長力
−忍び寄る「双子の赤字」
2012年12月7日発表
日本経済研究センター 中期予測班
日本経済研究センターは、2025年度までの第39回中期経済予測をまとめた。従来に比べ5年先の2025年までを展望した本予測によれば、日本経済は20年代に向け成長率が一段と低下し、財政と国際(経常)収支が共に赤字となる“双子の赤字”に陥る公算が大きい。それに伴い金利上昇や財政危機リスクが顕在化する可能性も高まる。開国など抜本的な成長力向上策や税・社会保障制度の一体改革が、焦眉の急である。
@製造業の海外生産シフトなどにより日本経済に占める高生産性セクターのウエートが低下する。一方で高齢化やサービス経済化の進展に伴って医療・介護等の低生産性セクターのウエートが高まるため、成長率に下押し圧力がかかる。また、労働力人口が減少するため働き手の面からも成長率が下押しされる。平均成長率は10年代の0.8%から20年代前半は0.4%になる。
A10年に約1億2,800万人だった人口は25年には約1億2,000万人にまで減少し、3.3人に1人が高齢者になる。それに伴い、10年に705万人だった医療・介護等の従業者数は25年には1,005万人に増加、6人に1人が医療・介護分野で働くという産業地図の変容が進む。一方、製造業の従業者数は921万人から719万人に減少する。
B東日本大震災を契機に日本の貿易・サービス収支は赤字になった。今後も製造業の海外生産シフトと供給力の低下による製品輸入の増加に加え、化石燃料価格の上昇や原子力発電の火力代替による化石燃料輸入の増加などにより赤字幅が拡大する。その結果、20年頃には所得収支の黒字を上回って経常収支も赤字化する(25年度で16.7兆円の赤字)。
C消費税率の引き上げにより、国・地方の基礎的財政収支の国内総生産(GDP)比のマイナス幅は一旦縮小するが、税率を10%に引き上げるだけでは黒字にできない。20年代は団塊世代が75歳以上になり医療・介護など社会保障費の増加が続くこと、またデフレにより名目成長率が伸び悩み税収も改善しないため、赤字幅は再び拡大し、25年度には26.7兆円となり、累積債務残高は1,387兆円と名目GDPの285.2%に達するだろう。
D日本経済は20年代初めに財政と国際(経常)収支の赤字が共存する“双子の赤字”に直面する。25年度の基礎的財政赤字がGDP比5.5%、経常赤字は同3.4%と、80年代米国の最悪期と並ぶかそれを上回る水準に達する。これまで家計の豊富な金融資産が、金融機関を通じて国債の消化を下支えしてきたが、政府債務が膨らみ続けると国内消化にも限界が訪れる。これは海外から借り入れをしなければならなくなることを意味しており、海外投資家が政府債務の規模に応じた高い財政リスクプレミアムを要求すれば、金利が急騰し、日本が財政危機に陥る危険性がある。
E世界経済の予測の結果、低迷が続く欧米や日本の世界経済に占めるシェアは縮小する一方、比較的高成長を続ける新興国の存在感が高まる。日本の世界GDPに占める名目GDPのシェアは、11年の8.5%から25年の4.4 %に縮小する一方、中国が10.6%から15.7%まで拡大し、世界第一位の経済規模の米国(25年で16.3%)に迫る。
ご案内――今後の中期経済予測公表予定について
今般公表いたしました第39回中期経済予測は、今後のGDPの改定などを織り込み、来年の3月頃に最終報告を公表いたします(マクロ予測、産業連関予測)。また、マクロ経済見通しを用いて、業界データの見通しについても公表いたします。
 |
△このページのトップへ

△このページのトップへ