中国がイノベーションの分野で世界をリードしつつある。スマホ決済やバイクシェア、無人店舗など表に見える部分だけでなく、人工知能(AI)などディープテックの分野でも躍進が目立っている。特許出願件数や学術論文などのデータを見ても、中国のイノベーション先進国ぶりがうかがえる。そしてその中心地が首都・北京市だ。
日本経済研究センターでは、製造業系スタートアップが勃興する広東省深圳市、電子商取引などネット起業が盛んな浙江省杭州市、国際起業都市の上海市の動向をシリーズ企画「中国創業革命」として1年ほど前に伝えた。中央政府が創業とイノベーション(創新)の二つを推進する「大衆創業・万衆創新(双創、大衆による起業と革新)」政策を掲げ、すべての国民が起業を目指す「創業革命」が進行していた。
今回はAIなどのイノベーションの震源地である北京、そして音声認識技術を核にAI産業集積を図る安徽省合肥市、技術シーズ創出とスタートアップ出口戦略に力を入れる香港特別行政区を7月に訪問した。米国との貿易戦争が本格化する中、イノベーション推進で産業高度化を進めることは中国の至上命題となっている。3都市のスタートアップ生態系(エコシステム)についてレポートする。第1回は中国のイノベーション力の現状を日米印との比較で俯瞰する。
- 中国のイノベーション力が躍進している。2018年の「グローバル・イノベーション・インデックス(GII)」では初めてトップ20入りした。特許出願件数ではすでに世界1位で、学術論文の本数でも米国を猛追。世界最多の研究者を抱え、研究開発支出は日本を上回る。
- 中国の中でも特許件数や論文数でリードするのが北京市だ。基礎研究に従事する研究者数、研究開発費でも北京がほかの地域を寄せ付けない。ユニコーン企業数では北京が半分近くを占め、圧倒的な存在感を示している。
- ユニコーン企業は2017年に入り北京市のAI系が急増し、深圳周辺の製造業系からシフトした。AI研究でも清華大学、北京大学の評価が上昇しており、中国は米国を超えつつあるとの見方も出ている。
シリーズ企画「中国、AI、イノベーション」
・【中】北京、大学とVCが集積―創業ストリートなど出会いの場も充実
・【下】合肥、音声認識で「声谷」形成―科大訊飛と中国科技大が核に
シリーズ企画「中国創業革命」
・【第1回】深圳、中国の「新シリコンバレー」に―電気自動車、ドローンなど新ハイテク産業集積
・【第2回】深圳発、モノ作りスタートアップの作り方―華強北のアクセラレーター「HAX」の挑戦
・【第3回】杭州、浙江大学人脈にアリババが加勢―「夢想小鎮」に「大衆創業」で800社集結
・【第4回】国際都市上海、スタートアップも国際的―チャイナクセラレーター、Xノードなど育成競う
バックナンバー
- 2021/04/14
-
加速する中国の社債デフォルト
- 2021/03/29
-
米中デカップリングとサプライチェーン
- 2021/03/24
-
ポスト・コロナの中国
- 2021/03/05
-
21年成長目標「6%以上」~「経済は長期好調」
- 2021/02/25
-
コロナ対応の非接触体温計、主役は中国製