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朝鮮半島リポート 【朝鮮半島リポート】 (第34回)

北朝鮮の経済難、貿易減と食糧不足が進む

――鉄道貨物再開で対中貿易回復が焦点に

朝鮮半島・北東アジア研究会
   

2022/10/11

 北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返し、東アジアの軍事的な緊張が高まっている。金正恩(キム・ジョンウン)政権が核・ミサイルへの執着を強める背景には対外関係の行き詰まりと内政上の要因があり、北朝鮮の経済状況は一段と悪化している。制裁と新型コロナウイルス対策に伴う貿易の減少と食糧難は深刻だ。関係資料をもとに、北朝鮮の経済状況を点検する。

【第34回のポイント】

① 活発な軍事活動の一方で、北朝鮮の対外貿易は縮小傾向が続いている。韓国側の調査報告書によると、21年の北朝鮮の貿易規模は前年比17.3%減の7億1333万ドルだった。国連安保理決議による国際社会の制裁と新型コロナウイルス感染症対策に伴う国境封鎖が続いてきたのが原因だ。

② 経済成長に欠かせない原料・燃料・資材・部品・設備の輸入が激減したことで、北朝鮮の生産・消費活動は停滞を余儀なくさせられている。食糧難は特に深刻だ。外貨、エネルギー、食料の3つの「不足」で「苦難の行軍」と呼ばれた1990年代後半に似た状態に陥っている。

③ 北朝鮮が頼らざるを得ないのが、貿易の9割以上を占める中国だ。9月26日に中国の新義州と北朝鮮の丹東間の貨物列車運行が再開した。北朝鮮は「自力更生」で極端な中国依存からの脱却も狙うが、当面は中国との貿易が経済運営に重要な影響を与える状況が続きそうだ。

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