フィンテック産業のなかで、最先端技術である人工知能(AI)の使用が活発になっているのが資産運用分野だ。めまぐるしく変わる相場環境に柔軟に対応できる投資アドバイザーや運用マネージャーを低コストのAIで再現し、これまで富裕層が中心だったサービス提供の裾野を、小口投資家にまで拡大しようとしている。
AIの分析対象も広がりつつある。株式や債券といった値動きなどのデータが豊富な「市場商品」に加え、不動産やローンなどのいわゆる「非市場商品」をターゲットとする企業も出ている。(本レポートは「勃興アジア・フィンテック」[3回シリーズ] の第3回)
【(下)のポイント】
- IT(情報技術)を使ったフィンテックのなかで、最先端の人工知能(AI)を使う動きが活発なのが資産運用だ。めまぐるしく変わる相場環境をAIで深読みすることで、顧客に有益な投資助言をしたり、高いリターンを還元したりすることを狙う。
- 顧客への投資助言では、AIを組み込んだ「ロボットアドバイザー」の市場が40兆円規模になっている。米国が発祥で、アジアでは資産運用ハブの香港が先駆け。顧客とプロ投資家をマッチングするサービスも登場している。
- 香港では、人間の勘や経験に頼る部分も大きかった不動産や消費者ローンの査定で、AIを使って不良案件を排除し、投資成果を高めようとする動きもある。
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