SPAC(特別買収目的会社)による上場を目論むスタートアップはどのような産業分野が多いのか。その分布をユニコーンと比較すると、医療、モビリティ、ハード、エネルギー、素材、不動産といった、比較的投資回収期間が長い分野が多かった。モビリティでは電気自動車(EV)関連のスタートアップが多く、エネルギー、ハード、素材に分類された企業の中にもバッテリーや充電ステーションなど関連ビジネスが多く見られた。EV最大手テスラの株価が高騰しているように、地球温暖化対策に熱心なバイデン政権の誕生も相まって、持続可能な社会の実現を目指すEVなど「グリーンSPAC」企業の上場ラッシュが起きている。しかしこうした「グリーンSPAC」企業の多くは上場後、株価が低迷している。SPAC上場そのものの持続可能性が問われている。
【ポイント】
- SPAC(特別買収目的会社)との合併で株式公開するスタートアップの産業分布をユニコーンの分布と比べると、医療、モビリティ、ハード、エネルギー、素材、不動産といった分野が多かった。投資回収に比較的時間がかかる分野と考えられる。
- モビリティに加え、エネルギー、ハード、素材に分類された企業には電気自動車(EV)関連企業が数多く見受けられた。完成車メーカーに加え、バッテリー、充電ステーションなど裾野は広がっている。持続可能な社会の実現を目指す「グリーンSPAC」に投資資金が流入し、こうした企業の上場ラッシュが起きている。
- テック株ブームを先導したEV最大手テスラの株価高騰や地球温暖化対策に熱心なバイデン政権の誕生が「グリーンSPAC」ブームの背景にある。しかし上場直後は株価が上昇したものの、その後下落に転じて低迷している企業も多く、虚偽報告を指摘される企業も出ている。SPAC上場自体の持続可能性が問われている。
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