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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「SPACが変えるイノベーション」 (5)

「スペースSPAC」、SFの“夢”はすでに現実

―宇宙旅行からロケット開発まで、「空飛ぶクルマ」も

上原 正詩
  主任研究員

2021/08/19

 モビリティ分野のSPAC(特別買収目的会社)上場スタートアップの事業対象は地上だけではなく空中や宇宙にも伸びている。宇宙・航空分野の「スペースSPAC」上場の先陣を切ったのは、宇宙旅行を手掛けるヴァージン・ギャラクティック(ニューメキシコ州ラスクルーセス)だ。衛星などを打ち上げるロケット開発を手掛けるスタートアップなども続々と名乗りを上げている。将来の都市間移動手段として注目される「空飛ぶクルマ」の開発企業も相次ぎ上場を発表している。SF(サイエンス・フィクション)の世界を彷彿させる“夢”のイノベーションへの投資も、個人投資家が選択肢として検討できるようになりつつある。

【ポイント】

  1. 宇宙・航空関連の「スペースSPAC」上場も電気自動車(EV)関連と並びモビリティ分野で目立つ。そもそもSPACブーム自体の先駆けとなったのが、宇宙旅行を手掛けるヴァージン・ギャラクティック(ニューメキシコ州ラスクルーセス)である。アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジン(ワシントン州ケント)との旅客獲得競争が本格化する。
  2. 宇宙開発ビジネスの本命は通信衛星などの打ち上げを可能にするロケットの開発で、ロケット・ラボ(ロサンゼルス)やアストラ(サンフランシスコ)などがSPAC上場する。民間ロケット開発でリードするイーロン・マスク氏のスペースXは宇宙通信ビジネスを切り離して株式公開を検討中とされる。
  3. 将来の都市間移動手段として注目される「空飛ぶクルマ」もSPAC上場の対象だ。低騒音、低環境負荷の電動垂直離着陸機(eVTOL)で、開発メーカーのジョビー・アビエーション(サンタクルーズ)や独リリウム(ミュンヘン)などが上場する。SF(サイエンス・フィクション)の世界を連想させる宇宙旅行や空飛ぶクルマは、個人投資家にとって“夢”ではなく現実の投資対象になりつつある。