文章や画像などのコンテンツを作り出すAI(人工知能)「生成(ジェネレーティブ)AI」がテック業界の話題をさらっている。米国の金融引き締めでスタートアップ全体への投資が鈍る中、生成AI系スタートアップには資金が流れ込む。ブームを牽引するのは、対話型AI「チャットGPT」を2022年11月に一般公開した米オープンAIである。チャットGPTは大量のテキストデータを学習して構築した「大規模言語モデル(LLM)」の一つで、日進月歩ならぬ“秒進分歩”で新しいLLMが登場する。オープンAIやグーグルから分離・独立したスタートアップも急速に台頭しつつある。生成AIビジネスの研究者、投資家、スタートアップ創業者などの経歴・人脈をたどり、その勢力図を分析する。
【ポイント】
- 対話AI「チャットGPT」で生成AIブームを牽引するオープンAIは、グーグル、Yコンビネーター、ペイパル・マフィアといった米西海岸ベイエリアの主役たちが創設した。2019年に営利・非公開に転換し、マイクロソフトとの提携を通じ開発を加速する。
- オープンAIから関係者が離脱する動きも表面化している。イーロン・マスク氏など投資家やダリオ・アモデイ氏ら研究者が別のスタートアップを立ち上げた。グーグルからも有力研究者が独立・創業し、個人へのパワーシフトが顕著になっている。
- AIモデルの公開性(オープンソース化)にこだわる勢力も欧州や米国東海岸を中心に台頭する。英スタビリティAIや米ハギング・フェイスなどで、アマゾン・ドット・コムがこうした企業に接近中である。
- 中国勢の生成AIへの対応も早い。百度(バイドゥ)がチャットGPTに対抗するモデルを発表し、ほかのテック企業も相次ぎ生成AI研究への取り組みを表明。AI投資家の李開復(カイフ・リー)も「AI2.0」を掲げて開発に乗り出した。
◆関連レポート◆
・食料高騰、食糧系スタートアップに関心高まる
・石油高騰、エネルギー系スタートアップに脚光
・ウクライナ戦争、防衛系スタートアップ投資加速
・食料高騰、食糧系スタートアップに関心高まる
・石油高騰、エネルギー系スタートアップに脚光
・ウクライナ戦争、防衛系スタートアップ投資加速
シリーズ企画「2022年、注目のユニコーン都市」
・【1】潜在力トップ3はNY、テルアビブ、ボストン
・【2】米国3都市、コロナ禍で医療系が拡大
・【3】ロサンゼルス、宇宙とメタバースで注目
・【4】テルアビブ、サイバーセキュリティ系が集積
・【5】中国3都市、製造系スタートアップが牽引
シリーズ企画「ユニコーン新潮流」
・【1】ユニコーン800社超え、デカコーンも倍増
・【2】「その他」の台頭、フィンテックが牽引
・【3】テック弾圧下の中国、半導体にシフト
・【4】テックブームの米国、ソフト系が席捲
第6回アジア経済中期予測 「コロナ禍のアジア、浮上するのはどこか」
第5回アジア経済中期予測 「米中対立下のデジタル・アジア――イノベーションと都市の行方」
バックナンバー
- 2023/05/08
-
起業人脈に見る生成AI勢力図
- 2023/04/04
-
中国との高速鉄道で変貌するラオス
- 2023/03/28
-
東アジアのリスクと経済安保
- 2023/03/22
-
マレーシア経済、高成長の22年から減速へ
- 2023/03/15
-
インドネシア経済、23年は消費が下支え