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中国・アジアウォッチ

起業人脈に見る生成AI勢力図

―オープンAI、グーグルから独立相次ぐ、オープンソース派、中国勢も台頭へ

上原 正詩
  主任研究員

2023/05/08

 文章や画像などのコンテンツを作り出すAI(人工知能)「生成(ジェネレーティブ)AI」がテック業界の話題をさらっている。米国の金融引き締めでスタートアップ全体への投資が鈍る中、生成AI系スタートアップには資金が流れ込む。ブームを牽引するのは、対話型AI「チャットGPT」を2022年11月に一般公開した米オープンAIである。チャットGPTは大量のテキストデータを学習して構築した「大規模言語モデル(LLM)」の一つで、日進月歩ならぬ“秒進分歩”で新しいLLMが登場する。オープンAIやグーグルから分離・独立したスタートアップも急速に台頭しつつある。生成AIビジネスの研究者、投資家、スタートアップ創業者などの経歴・人脈をたどり、その勢力図を分析する。

【ポイント】

  1. 対話AI「チャットGPT」で生成AIブームを牽引するオープンAIは、グーグル、Yコンビネーター、ペイパル・マフィアといった米西海岸ベイエリアの主役たちが創設した。2019年に営利・非公開に転換し、マイクロソフトとの提携を通じ開発を加速する。
  2. オープンAIから関係者が離脱する動きも表面化している。イーロン・マスク氏など投資家やダリオ・アモデイ氏ら研究者が別のスタートアップを立ち上げた。グーグルからも有力研究者が独立・創業し、個人へのパワーシフトが顕著になっている。
  3. AIモデルの公開性(オープンソース化)にこだわる勢力も欧州や米国東海岸を中心に台頭する。英スタビリティAIや米ハギング・フェイスなどで、アマゾン・ドット・コムがこうした企業に接近中である。
  4. 中国勢の生成AIへの対応も早い。百度(バイドゥ)がチャットGPTに対抗するモデルを発表し、ほかのテック企業も相次ぎ生成AI研究への取り組みを表明。AI投資家の李開復(カイフ・リー)も「AI2.0」を掲げて開発に乗り出した。