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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「香港『ライズ』に見るテクノ地政学」 (下)

米インポッシブル、アジアでも人工肉普及へ

――印エイターは二輪車市場で電動化推進

上原 正詩
  主任研究員

2019/08/20

 香港テックイベント「ライズ」はアジアのスタートアップと投資家の出会いを促進するだけでなく、世界のイノベーションにおける最新の潮流を参加者に紹介する場でもある。米中ハイテク戦争が激化する中で、次世代通信規格「5G」や人工知能(AI)など中国におけるイノベーションの社会実装への関心が高かったが、中国以外の国・地域での動きも参加者の注目を集めた。
 新しい技術の社会実装は中国の方が速いかもしれないが、これまでにないまったく新しいアイデアで既存市場をディスラプト(破壊)する企業としてはやはり米国に期待がかかる。米国からはウーバーテクノロジーだけでなく、人工肉の開発・製造を手掛けるスタートアップ、インポッシブル・フーズが登場した。
 インドや東南アジアからも10年後には無視できなくなりそうな、ユニコーン及びユニコーン予備軍が生まれてきている。しかもネット系ではなく製造業系のスタートアップだ。インドからは電動スクーターメーカー、エイター・エナジーのトップが登壇。東南アジアからは、フィリピン唯一のユニコーン企業で、デザイン性の高いプレハブ住宅を世界展開するレボリューション・プレクラフテッドのトップが講演した。シリーズ企画(下)ではそうした企業トップへのインタビューを交えながら、最先端の動きを紹介する。

インポッシブル・フーズのバーガー

【(下)のポイント】

  1. 香港テックイベント「RISE(ライズ)」で紹介されたのは中国のイノベーションだけではない。米国からは植物由来の人工肉を開発・製造するインポッシブル・フーズが登場。同社は動物を使った食肉生産システムを2035年までに人工肉に置き換えることを目標に掲げ、そのためニック・ハラ上級副社長(SVP)はアジア市場開拓の重要性を語った。
  2. ウーバーテクノロジーズなどモビリティ(移動)関連の動きへも関心が高く、インドからは電動スクーターを製造・開発するエイター・エナジーのタルン・メータ共同創業者兼CEOが来場。電動化による二輪車市場激変を予想した。
  3. 東南アジアからはフィリピン唯一のユニコーン企業、レボリューション・プレクラフテッドのロビー・アントニオ創業者兼CEOが登壇した。同社はデザイン性の高いプレハブ住宅を世界で展開中だが、アントニオ氏は有名人のブランド電子商取引ビジネスを新たに開始したことを明らかにした。
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