香港テックイベント「ライズ」はアジアのスタートアップと投資家の出会いを促進するだけでなく、世界のイノベーションにおける最新の潮流を参加者に紹介する場でもある。米中ハイテク戦争が激化する中で、次世代通信規格「5G」や人工知能(AI)など中国におけるイノベーションの社会実装への関心が高かったが、中国以外の国・地域での動きも参加者の注目を集めた。
新しい技術の社会実装は中国の方が速いかもしれないが、これまでにないまったく新しいアイデアで既存市場をディスラプト(破壊)する企業としてはやはり米国に期待がかかる。米国からはウーバーテクノロジーだけでなく、人工肉の開発・製造を手掛けるスタートアップ、インポッシブル・フーズが登場した。
インドや東南アジアからも10年後には無視できなくなりそうな、ユニコーン及びユニコーン予備軍が生まれてきている。しかもネット系ではなく製造業系のスタートアップだ。インドからは電動スクーターメーカー、エイター・エナジーのトップが登壇。東南アジアからは、フィリピン唯一のユニコーン企業で、デザイン性の高いプレハブ住宅を世界展開するレボリューション・プレクラフテッドのトップが講演した。シリーズ企画(下)ではそうした企業トップへのインタビューを交えながら、最先端の動きを紹介する。
- 香港テックイベント「RISE(ライズ)」で紹介されたのは中国のイノベーションだけではない。米国からは植物由来の人工肉を開発・製造するインポッシブル・フーズが登場。同社は動物を使った食肉生産システムを2035年までに人工肉に置き換えることを目標に掲げ、そのためニック・ハラ上級副社長(SVP)はアジア市場開拓の重要性を語った。
- ウーバーテクノロジーズなどモビリティ(移動)関連の動きへも関心が高く、インドからは電動スクーターを製造・開発するエイター・エナジーのタルン・メータ共同創業者兼CEOが来場。電動化による二輪車市場激変を予想した。
- 東南アジアからはフィリピン唯一のユニコーン企業、レボリューション・プレクラフテッドのロビー・アントニオ創業者兼CEOが登壇した。同社はデザイン性の高いプレハブ住宅を世界で展開中だが、アントニオ氏は有名人のブランド電子商取引ビジネスを新たに開始したことを明らかにした。
・第4回アジア経済中期予測 「アジア、浮かぶ都市、沈む都市」
シリーズ企画「香港『ライズ』に見るテクノ地政学」
・【上】貿易戦争で米中関係が焦点に――インド、東南アジアに投資機会
・【中】中国、ネット世界で独自の生態系構築――脱模倣へ、5GやAIなど社会実装で先行
シリーズ企画「北米、飛躍する起業都市」
・【第1回】突出するベイエリア、ユニコーン6割集中――背後にアクセラレーター「Yコンビネーター」
・【第2回】ベイエリア、サンフランシスコに重心移動――アクセラレーター、差別化競う
・【第3回】シリコンバレーでムーンショットを狙え――シンギュラリティ大学など世界的課題に挑戦
・【第4回】ロサンゼルスにシリコンビーチ出現――サンタモニカに起業の風、モビリティ関連も注目
・【第5回】シアトル、マイクロソフトが生態系中心に――アマゾン、ワシントン大とトライアングル形成へ
・【第6回】バンクーバー、デジタル娯楽産業が勃興――「カスカディア回廊」と新移民政策が追い風に
シリーズ企画「中国、AI 、イノベーション」
・【上】中国、イノベーション先進国に――特許、論文数で米凌駕、北京中心にAI振興
・【中】北京、大学とVCが集積――創業ストリートなど出会いの場も充実
・【下】合肥、音声認識で「声谷」形成――科大訊飛と中国科技大が核に
※旧サイト(~2018.8月)の中国・アジア研究、アジア予測、コラムなどの一覧はこちらから
バックナンバー
- 2023/07/05
-
中国の乗用車市場から外資が消える?
- 2023/07/03
-
アジア・エコノミスト:「生成AIは生産性を向上」
- 2023/06/22
-
中国経済、鈍い回復力 「5%成長」に暗雲
- 2023/05/08
-
起業人脈に見る生成AI勢力図
- 2023/04/04
-
中国との高速鉄道で変貌するラオス