香港のテックイベント「ライズ」では昨年から、ベンチャーキャピタリストの楊佩珊(イーディス・ヤン)氏と香港英字紙「サウス・チャイナモーニング・ポスト」及びその中国テック報道部門「アバカス」が共同作成した「中国インターネットレポート」を公表している 。楊氏は米500スタートアップスのパートナーで、ブロックチェーン投資専門のプルーフ・オブ・キャピタルのマネージング・パートナーも兼務し、投資家の視点から中国のネット関連の最新トレンドを追いかけている。米クライナー・パーキンス(KPCB)の元パートナー、メアリー・ミーカー氏(現ボンド・キャピタル)が毎年公表し注目を集めている「インターネットトレンズ」の中国版といったイメージだ 。
今年もイベント2日目に同レポートの最新版「中国インターネットレポート 2019」を発表した。シリーズ企画(中)ではレポートを参考にしつつ、中国のテクノ事情をレポートする。
- 中国はその巨大な国内市場を背景に、インターネットの世界で独自の生態系を構築している。米国企業を中心とする生態系とは似て非なるパラレルワールド(平行宇宙)が形成されつつある。
- 中国のネット世界は米国の模倣が大半だが、最近では「模倣する側から模倣される側」になりつつある。例えば「スーパーアプリ」や短編動画アプリなどだ。
- 次世代通信網「5G」でも中国も主要都市で試験運用を進め、秋には約40都市で商業サービスが始まる見通し。これは米国の倍近い都市数だ。
- 監視や顔認証システムなど人工知能(AI)技術でも社会実装で進んでいる。自動運転技術の実証でも米国を急速に追い上げ、米国を舞台に中国企業が積極的に研究を進めている。
・第4回アジア経済中期予測 「アジア、浮かぶ都市、沈む都市」
シリーズ企画「香港『ライズ』に見るテクノ地政学」
・【上】貿易戦争で米中関係が焦点に――インド、東南アジアに投資機会
・【下】米インポッシブル、アジアでも人工肉普及へ――印エイターは二輪車市場で電動化推進
シリーズ企画「北米、飛躍する起業都市」
・【第1回】突出するベイエリア、ユニコーン6割集中――背後にアクセラレーター「Yコンビネーター」
・【第2回】ベイエリア、サンフランシスコに重心移動――アクセラレーター、差別化競う
・【第3回】シリコンバレーでムーンショットを狙え――シンギュラリティ大学など世界的課題に挑戦
・【第4回】ロサンゼルスにシリコンビーチ出現――サンタモニカに起業の風、モビリティ関連も注目
・【第5回】シアトル、マイクロソフトが生態系中心に――アマゾン、ワシントン大とトライアングル形成へ
・【第6回】バンクーバー、デジタル娯楽産業が勃興――「カスカディア回廊」と新移民政策が追い風に
シリーズ企画「中国、AI 、イノベーション」
・【上】中国、イノベーション先進国に――特許、論文数で米凌駕、北京中心にAI振興
・【中】北京、大学とVCが集積――創業ストリートなど出会いの場も充実
・【下】合肥、音声認識で「声谷」形成――科大訊飛と中国科技大が核に
※旧サイト(~2018.8月)の中国・アジア研究、アジア予測、コラムなどの一覧はこちらから
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