日本経済研究センター経済予測班では、経済予測・分析の中で見えたトピックスに焦点を絞ったリポート、「経済百葉箱」を創刊します。経済はしばしば気象にたとえられますが、「百葉箱」はご存知のように、気温や湿度を正確に測定するための箱であり、「観測」の原点となる存在です。本リポートは随時掲載します。
現在、日本銀行では、消費者物価前年比2%という「物価安定の目標」実現を目指し、4月に導入した「量的・質的金融緩和(QQE)」のもと、大胆な金融緩和に取り組んでいる。そうしたなか、消費者物価(生鮮食品を除く)の前年比は6月以降上昇に転じ、現在では0%台後半までプラス幅を拡大させている。果たしてこのまま長期デフレから脱却するのか。本稿では、そのカギを握る賃金の影響について、「実質賃金ギャップ」を推計して分析を行った。▼ ポイント ▼●物価を考える上で、マクロの需給バランスを捉えたGDPギャップのほかに、理論的に導かれる均衡実質賃金と実際の実質賃金との乖離である「実質賃金ギャップ」も重要だ。その値がマイナスであれば物価に下押し圧力がかかるため、たとえ景気が回復してもなかなかインフレにはならない。●例えば2002年以降の景気拡大期では、需給バランスが改善を続け、2007年度にはGDPギャップがプラスに転じた。しかし、企業の人件費抑制姿勢を背景とする負の実質賃金ギャップが続いたため、結局デフレ脱却には至らなかった。●実質賃金ギャップを予測したところ、14年度末にかけてマイナス幅は縮小するとの結果が得られた。日銀が標榜する2年で「物価安定の目標」を達成するのは困難だが、今後も景気拡大が続き、実質賃金ギャップがプラスに転じていけば、そう遠くない将来、目標達成の可能性も見えてくる。