日本経済研究センター経済予測班では、経済予測・分析の中で見えたトピックスに焦点を絞ったリポート、「経済百葉箱」を創刊します。経済はしばしば気象にたとえられますが、「百葉箱」はご存知のように、気温や湿度を正確に測定するための箱であり、「観測」の原点となる存在です。本リポートは随時掲載します。
2008年9月のリーマン・ショック以降、輸出が伸び悩む一方で輸入が増勢を強めており、貿易赤字は拡大を続けている。その傾向は円高修正後も変わる兆しが見えない。赤字拡大には原発停止による化石燃料の輸入増加という要因もあるが、日本の貿易構造あるいは企業行動がリーマン・ショック後に変化していることも背景にありそうだ。本稿では、この点について検証していく。▼ポイント▼●最近、貿易赤字が拡大を続けているが、原発稼動停止による化石燃料の輸入増や消費増税前の駆け込み対応といった特殊要因だけが背景ではない。テレビやパソコン、携帯電話に代表される電気機器では明らかに構造変化が起きており、それも貿易赤字の拡大に影響を及ぼしている。●電機メーカーの多くでは、新興国メーカーの追い上げによって国際競争力が低下していく中で、リーマン・ショック後異常な円高が思いのほか長く続いたことから、国内の生産拠点を統廃合し、海外に移転するという動きを加速させた。●そうした中、わが国における米アップル社の「iPhone」人気も手伝って、中国からの情報通信機械の輸入が急増。その結果、国内供給に占める輸入品の割合(輸入浸透度)が5割近くに達するという状況となっている。●海外生産シフトの動きは部品メーカーでも徐々に拡大し、国際的な垂直分業(部品を輸出して完成品を輸入する)体制が過去ほど明確ではなくなるもとで、国内電機メーカーの国際競争力低下もあって、昨年来の急速な円高修正にもかかわらず輸出回復が遅れ、貿易赤字は拡大を続けている。